深夜にめちゃくちゃ片想い中の後輩から「終電逃したから迎えに来て」って電話が来たから迎えに行ったらビンタされた件について

しましまにゃんこ

第1話 深夜に突然の電話

◇◇◇


「ねぇ先輩。今飲んでるから迎えに来てくれる?終電なくなっちゃったの」


 時計を見ると深夜一時。ぶっちゃけもう寝てたし、他のやつからの電話だったら絶対に出なかった。着信の名前見ただけで飛び起きるとか我ながら純情すぎてウケる。


「お前なあ、今何時だと思ってるんだよ……それで?どこで飲んでるの?」


 余裕ぶって返事したけど、さっきから心臓がうるさい。


「黒崎駅の近くのAzってバーだよ。最近見つけた穴場のお店なの。知ってる?」


「知らない。じゃあ、駅の駐車場に着いたら電話するから。店の中で待てる?」


「本当に?いいの?先輩やっさしい~!ありがとう!待ってる!で、何分ぐらいで来れそう?」


「俺ん家からだと早くても三十分は掛かるぞ?待てんの?」


「いいよいいよ。待ってるから」


「ハイハイ。んじゃ大人しく待ってろよ」


 そのへんにあった服を掴み、適当に着替えるとすぐに駅に向かう。電話一本で真夜中に呼び出される安い男。自分の健気さに涙が出そうだ。だけど、深夜の街に彼女を一人で放っておくことなんてできない。あっという間に男が群がってくるのが目に見えてる。危険すぎる。どうせ心配で眠れなくなるぐらいなら、大人しく迎えに行ったほうがまだマシだ。


 美人でスタイルが良くて、明るくて可愛い優奈。入社以来ずっとずっと片想いしてるけど、全然手が届かない相手。好きで好きでたまらないくせに、恋人未満にもなれないただの気のいい先輩ポジションを後生大事に継続している。いいんだ。へたれでも。告白して振られたら、もう側にはいられない。だったら、仲のいい先輩後輩のままでいいから、もう少し側にいたい。せめてあいつに、彼氏ができるまでは。

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