散歩の七百三十三話 激戦
流石にこれはまずいと思い、僕たちも直ぐに動き出した。
「スー、アオ、状態異常解除の魔法を!」
「はい!」
シュイン、ぴかー。
バシッ!
「皆さま、焦らずお待ち下さいませ」
僕とスー、それにアオが間髪入れずに魔法を放ったが、執事が魔法障壁を展開して防いでしまった。
二人と一匹の魔法をやすやすと防ぐとは、やはり執事は侮れない。
その間もゴンゾーの体は歪に膨れ上がり、筋肉も盛り上がっていった。
「ガッ、フウフウ……」
「おや、どうやら完成したみたいですよ」
ゴンゾーの目は真っ赤になり、牙が口から飛び出して興奮気味によだれを垂らしていた。
筋肉は歪に盛り上がり、体も大きくなり服を破いていた。
こうなったら、ゴンゾーを足止めして状態異常回復魔法を使わないといけない。
ここは、手分けして戦わないと。
「僕が執事を抑えるから、みんなでゴンゾーを止めて状態異常回復を」
「「「はい!」」」
ダッ!
ガキン!
僕は、身体能力強化魔法を使って一気に執事に切りかかった。
しかし、騎士団長のバルガス様と互角に戦っただけあって、執事も難なく剣を受け止めていた。
「おやおや、いきなり斬りかかるとは。シュン様らしくありませんな」
「最初から全力を出さないと止められないからね」
「それは光栄です」
話はそのくらいにして、僕と執事は激しく切りあった。
執事は、全く表情を変えずに話していた。
やはりこう見ると、人形っぽさが出ている。
それに実際に戦って分かったが、関節の可動域が人とは違う。
そして、決定的なことも分かった。
「ふっ」
シュッ、ガキン!
なんと、僕の斬撃を執事が腕で受け止めたのだ。
しかも、金属的な衝撃まで伝わった。
もしかしたら金属を仕込んでいるだけかもしれないが、指先でも金属のような衝撃が伝わった。
「流石はシュン様ですな。仲間がピンチになると、騎士団長殿よりも強くなるとは」
執事が何かを言っているけど、今の僕には返事をする余裕はない。
執事を観察して、動きを見切って、攻撃する。
ひたすら、このことを繰り返していた。
そして、高速の剣撃が繰り広げられていたので、周りの人も僕と執事に近づけないでいた。
「グオー!」
ブオン、すか。
「わーい、こっちだよ!」
一方、ゴンゾーは主にシロが相手をしていた。
どんなに力とスピードが上がっても、獣みたいに単調な攻撃なので簡単に避けられる。
それに、シロも全力で動いているわけではないし、ゴンゾーを挑発する余裕すらあった。
その間に、スーとアオが魔法の準備を整えていた。
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