散歩の七百三十二話 僕たちの前に現れた者
魔法陣を中心に魔力の風が吹き荒れたので、僕たちは急いで子どもたちを小屋の中に避難させます。
屋台は、取り敢えずアイテムボックスにしまっておこう。
「きゃー!」
「なんだなんだ!?」
「皆さん、慌てないで下さい」
「魔法陣から、距離を取って下さい」
観光客も、実行委員が中心となって避難誘導していた。
こういう時に備えて、避難誘導も準備していたという。
そして、魔法陣が消えると同時に、以前も会ったあの執事が姿を現したのだ。
瞬時に、僕たちは剣を手に取り警戒レベルを上げます。
「皆さま、お久しぶりでございます。こうして再び会えて、嬉しく思います」
恭しく礼をする執事だが、見た目とは違い相変わらず凄い迫力を出している。
やはり、この人は危険だ。
そして、僕は前回やる暇のなかった鑑定魔法を使った。
すると、驚愕の結果が表示された。
「えっ? 魔導人形?」
「ふふ、分かってしまいましたか。これでも、かなりのレベルでないと見抜けないようになっているのですが。流石はシュン様ですね」
相変わらず表情を崩さずに話をしているが、アオの鑑定でも同じ結果だった。
つまり、目の前の執事は人ではないんだ。
すると、執事は軽く右手を上げました。
再び魔法陣が現れ、なんとこれまた僕たちが知っている人が現れました。
この魔法は、北の辺境伯領の武道大会で、アオが追い詰めた魔法使いも使っていたな。
シュイン、ぴかー!
「うん? ここはどこだ?」
そうです、なんと現れたのは新人冒険者向け講習で悪態をついて連行された、元西の辺境伯家の使用人ゴンゾーでした。
確か、西の辺境伯領に送られている最中だったはず。
ゴンゾー本人も、突然のことで何が何だか分かっていないみたいだ。
すると、ゴンゾーは僕たちのことに気が付いたみたいだ。
「あっ、ああー! お、お前らは、また俺に何かするつもりだな!」
威勢の良いゴンゾーの声が会場に響いたけど、僕たちとしては悪ささえしなければ何もやるつもりはない。
そう、何もしなければ、だ。
「ゴンゾー、あのものたちを倒す力が欲しくありませんか?」
「力、そう、俺は誰にも負けない力が必要なんだ!」
「では、その力を授けましょう」
ズシャ。
「がっ、ああ……」
執事は、ゴンゾーの首にエピペンみたいなものを突き刺した。
あっという間のことで、僕たちはただ見守ることしか出来なかった。
注射されたゴンゾーは、白目をむいて口を大きくあけながら全身をぴくぴくと痙攣させていた。
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