散歩の七百一話 不穏な兆候

 翌日、僕たちは伯爵領を出発して闇組織問題の起きた男爵領に向かいます。

 街道の片側だけ森が続くので、昨日に引き続きアオが馬のところにいって待機しています。


「もうそろそろ東の辺境伯領への旅も折り返しだけど、この領地が一番の難関みたいだね」

「何もないことを祈るばかりです。民に悪い影響が出ていなければ良いのですが……」


 スーも、これから向かう男爵領の事をかなり気にしていました。

 最悪、郊外で野営をすることも検討しなければならない。

 そんなことを頭に入れながら、馬車は進んでいきます。


「「「うーん、今日はここまで」」」

「そうか。じゃあ、勉強道具をしまってね」

「「「はーい」」」


 お昼前になると、シロたちも勉強を終えた。

 でも、ちょっと周囲を気にしているみたいだ。

 すると、馬車が止まって馬が嘶いた。


「「ヒヒーン!」」


 シュイーン、ぴかー。


「周囲に森に生息するオオカミが二十頭、後方にも十頭いるぞ」

「「「やっつける!」」」


 僕が探索結果を伝える前に、シロたちが馬車から降りてしまった。

 スー、ジョディーさん、それにノア君は馬車の中に残ってもらい、僕も馬車から降ります。

 すると、随行員用の馬車から剣を手にしたラストさんも降りてきました。


「ちょっと大きな集団だな、全て倒してしまおう」

「「「おー!」」」


 ラストさんも、少し厄介な相手だと思っているみたいです。

 さっそく、馬とアオ、それに護衛も混じってオオカミ討伐を始めます。


 シュイーン。


 僕は、念の為に馬車に魔法障壁を展開します。

 他の人たちもとても強いらしいので心配無用だけど、念には念を入れます。


「「「とー、やー!」」」

「せい」

「「「ギャイン」」」


 とはいえ、数は多くても相手はオオカミです。

 ものの数分もあれば、全頭撃退できます。

 もちろん、怪我人はなしです。

 アオが血抜きとアイテムボックスへの格納をしている間、僕はラストさんと状況を話し合います。


「もし、この先も同程度のオオカミの群れが現れたら、普通の商隊や馬車便は耐えられない可能性がありますよね?」

「もちろんだ。容易く倒しているが、オオカミ三十頭の群れは大きい。定期的な害獣駆除をしていない、もしくは群れが大きくなっての餌不足だろう」


 ラストさん曰く、餌が充実しているのなら、オオカミもわざわざリスクを冒してまで人を襲わないという。

 なのに、今回は群れで襲ってきたのが引っかかるみたいです。

 準備が整ったので再び馬車を進めるけど、その後も男爵領の領都に着くまでに三回のオオカミの襲撃がありました。

 これは、絶対に男爵側で何か理由がありそうです。

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