散歩の六百五十六話 新年の挨拶
「シュンお兄ちゃん、まってよー」
ここで、下の階の下級貴族のところにいたシロが、慌てて僕の後を追いかけてきた。
そして、僕とスーの前にやってきて、頬を膨らませながらぷりぷりと抗議をしてきた。
僕とスーは、苦笑しながらシロの頭を撫でていた。
目の前で起きた異質化した者への対応で、シロの事をすっかり忘れていたのは内緒です。
「シロよ、下にいる者で他に怪しいものはいたか?」
「うーん、いなかったよ。悪い感じはしなかった」
王妃様の質問に、シロは顎に指を当てて少し考えてから答えていた。
陛下も、シロの答えを聞いて満足そうに頷いていた。
そして、陛下と王妃様が近衛騎士を引きつれながらバルコニーに出ました。
「「「うおおおおお!」」」
その瞬間、王宮前広場にいた住民から大歓声が上がりました。
というか、想像以上に凄い人数が集まっているなあ。
陛下と王妃様は、威厳たっぷりな表情で観衆に手を振っていた。
王族もバルコニーに出ているけど、貴族は陛下の挨拶が終わってからです。
陛下は、マイク型魔導具を手にしました。
「皆の者と新しい年を迎えられて嬉しく思う。昨年は闇組織の襲撃があり、先程も襲撃があったが全て跳ねのけた。今年は闇組織に打ち勝ち、実りのある年にしたい。そして、また新年に皆と笑顔でここに集まろうではないか」
「「「うおおおお!」」」
短いけど力強い陛下の言葉に、住民は大盛りあがりです。
そして、僕たちもバルコニーに出る事になりました。
辺境伯様達に背中を押されながら、僕はスーの隣に並びました。
「「わーい!」」
シロはジェフちゃんの隣に並んで、元気よく手を振っています。
僕とスーも、ちょっと顔を合わせてから住民に手を振りました。
こうして、十分近く住民に手を振り、僕たちは王宮内の応接室に向かいました。
因みに、用事のない貴族はこれで解散だそうです。
「住民に大きな被害も出ず、一安心だ。事前対策を進めていた者は、大義であった」
「「「畏れ入ります」」」
軍部だけでなく、僕たちも陛下から褒められました。
アオや馬だけでなくフラン達も頑張ったから、後でご褒美をあげないと。
ジルたち冒険者の功績もとても大きいし、後でご馳走を作ってあげないとね。
「しかし、あの魔導具の効果は非常に大きい。謁見の間や他の所にも設置を進めよう」
「ドラゴンのウロコは沢山ありますので、軍事施設などにも設置した方が良いかと思います」
「実際に奴らの襲撃もあったからな。優先的に進めよう」
悪意のある者が弾かれたのを見た時は、こんなにもの効果があるのかと思ったよ。
可能なら、うちの馬車にも取り付けたいな。
「スーよ、暫くはスラム街の炊き出しを続けるように。犯罪者を捕まえるのもそうだし、住民への福祉も兼ねているからな」
「畏まりました、お父様」
スラム街への炊き出しは効果があったし、これは続けていこうとなった。
スーも、ふんすってやる気を見せていました。
ここで王妃様がニヤリとしながら一言。
「しかし、スーにシュンよ。流石に見つめ合うのを披露するのは、些か早いのでは?」
「「えっ!」」
僕とスーはそんなことは思っていなかったけど、周りからはそう見られたみたいです。
こうして、解散するまで僕とスーのネタでずっと話が絶えませんでした。
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