散歩の六百二十一話 みんなを屋敷にご招待

 そして、僕たちだけでなくこの人たちも屋敷に来ることになりました。


「スーお姉様のお屋敷を見てみたいです!」

「私も興味あります。是非とも伺わせて下さい」


 ということで、フィーナさんとトリアさんもついてくることになりました。

 さっそく馬車に乗って、屋敷に向かいます。


「わあ、ここがスーお姉様の屋敷なんだ!」

「庭もよく手入れされていて、とても素晴らしいです」


 王城からあっという間に屋敷に到着し、玄関に降り立ったフィーナさんとトリアさんはかなり感動していました。

 余計なものがないので、庭も広々とした印象を受けます。

 さっそく屋敷の中に入ると、玄関ホールに飾られてある大きな絵と女神様の木像が僕たちを出迎えました。


「わあ、素晴らしい絵です! スーお姉様が、まるで天使様の様です!」

「女神様の木像も、まるで目の前に女神様がいるみたいですわ」


 トリアさんもだけど、フィーナさんはスーが描かれた絵を見てとても感動していました。

 当のスーは、少し恥ずかしそうにしているけど。

 そして、作品を褒められた芸術家たちが元気よくこたえていました。


「この絵はね、シロが一生懸命に描いたんだよ! 女神様の木像は、アオちゃんが作ったんだ」

「ええー! こんな素晴らしい絵を、シロちゃんが描いたの! シロちゃん、凄いです!」

「アオちゃんは、祭りの時にも女神様の木像を作っていましたが、更に精巧な木像ですわ」


 既に西の辺境伯領でアオの作った木像を見ているトリアさんの驚きは控えめだけど、フィーナさんの興奮ぶりはもの凄かった。

 まあ、ここまで精巧な絵が描ける画家が王都にも殆どいないのが原因らしい。

 流石にいつまでも玄関にいる訳にはいかないので、次々に屋敷内を案内します。

 その度に、特にフィーナさんは感動しているので、みんなでフィーナさんを微笑ましく見ていました。

 そして、絶賛工事中のお風呂に到着です。


「あのね、お風呂はまだ工事中だから入れないの。年明けまでかかるんだって」

「うーん、それは辛いですね。冬なので、温かいお湯に浸かりたいたですわね」


 職人さんが忙しそうにしているところを見て、流石のフィーナさんもがっかりです。

 そんな中、資材を運ぶ人の中に見たことのある冒険者の姿がありました。

 僕は、その冒険者に声をかけました。


「おーい、ダンか?」

「あっ、本当だ!」

「うん? その声は、シュンとシロちゃんか?」


 荷物を持った冒険者が振り向くと、間違いなく南の辺境伯領で一緒に冒険者活動をしたダンだった。

 よく見ると、他の四人も沢山の荷物運びをしている。

 スーも、ダンに気がついたみたいです。


「ダンさん、お久しぶりです。お元気でしたか?」

「ぼちぼちとやっているぞ。それにしても、スーはまるでお姫様な衣装だな」


 あっ、そうか。

 王城から帰ってきて、そのままフィーナさんとトリアさんの屋敷の案内をしていたっけ。

 スーは王女として相応しい服装をしていたが、どうもダンはスーが王女だと分かっていないみたいだ。

 ここは、早めに説明をした方が良さそうです。


「ダン、この屋敷の持ち主のスーザン王女殿下です」

「その節は、大変お世話になりました」

「ははは、シュンもスーも冗談が上手い……えっ、マジ?」


 スーが丁寧な礼をすると、ダンは思わず固まってしまいました。

 更に、シロとアオもうんうんと頷いています。

 ダンはこの状況を理解できていないみたいなので、休憩時間に改めて説明する事になりました。

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