散歩の五百八十八話 お腹が減っては何も出来ぬ
さて、あの孤児院から来た四人組にどうやって声をかけようかと思っていたら、既に別件でシロ達が動いていた。
グルルル……
「「「「お腹空いたよ……」」」」
「もしかして、ご飯ないの?」
「じゃあ、パンを分けてあげるよ!」
「いっぱいあるよ」
「パパの作ったサンドイッチは美味しいの」
どうやら四人は、食べる物を持っていなくて食事をするだけのお金も持っていないらしい。
これは流石に良くないし、シロ達も四人を誘っています。
僕とスーは、顔を見合わせて頷きました。
「ここだと邪魔になっちゃうから、ギルドの個室を準備してあげるね」
「「「「はーい」」」」
講師をして教えていたのもあってか、四人はスーの言う事を素直に聞いていました。
そのまま僕たちは、偉い人達が待っている個室に向かいました。
「おっ、無事に終わったみたいだな」
「外から見ていたが、中々良い講師ぶりでしたぞ」
個室には何故かゴーリキーさんはおらず、代わりにガンドフさんとヘーベル枢機卿かソファーに座っていた。
王立騎士団団長と教会聖騎士団団長がいるなんて、予想外に大きな事件になったぞ。
子ども達は恐る恐るだったけど、ソファーに座った。
「伯父様もいらしていたんですね。すみません、先に子ども達に食事をさせても良いですか?」
「構わんよ。講習を受けてお腹が空いただろうからな」
ガンドフさんがにこやかに許可してくれたので、さっそくシロ達が沢山のパンをマジックバッグから取り出した。
ジュースもあるので、子ども達は目を輝かせながらパンを食べ始めた。
僕もパンを摘みつつ、簡単に話を聞くことに。
「想像ですけど、その孤児院のトップはお金を横領した上に犯罪組織とかにも繋がっていたとか?」
「シュンは、現場を見ているかの様に言い当てるな。更に暴力性の高くて犯罪組織に使えそうな者を、犯罪組織に売り渡していたよ」
「それで得たお金で、子どもは適当に生活させていて自分は豪勢な生活をしていた。聖職者にあろうものが、何とも情けない」
ガンドフさんとヘーベル枢機卿曰く、どうも、この前行ったスラム街の教会とはまた別の教会付属の孤児院で不正が行われていたという。
しかも、人神教に繋がりのある者で、獣人の子どもを痛めつけていたという。
騎士団と教会騎士団の合同捜査で不正をしていた者は一斉に捕まって、孤児院にいた子どもは全員救出されたという。
「教会の面々は全員入れ替えだ。残念ながら、司祭も捕まっている。金の魔力とは、本当に怖いものだよ」
「子どもを食い物にしてる時点で、僕としては許せないです」
「普通は、シュンみたいに考える。だが、奴らはそんな考えを持っていなかった」
ヘーベル枢機卿が、かなり残念な表情をしながら話をしてくれた。
どう考えても子ども達の栄養状態も良くなさそうだし、スタッフが入れ替わったとしても直ぐに孤児院に戻すのは難しいだろう。
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