散歩の四百八十四話 会議の始まり

 そんな豪快なヘーベル枢機卿も、フラン、ホルン、ヴィヴィを見ると少し悲しそうな表情に変わった。


「この子らが、悪魔召喚の為に集められたり虐待する為に集められた子か。他にも、悲惨な運命を辿った多くの子がいると聞いた。何と悲しいことか」

「僕も何かできなかったのかと、考える事がありました。でも、特にブローカー伯爵領であった事は、僕たちには何もできなかったのだと痛切に感じました」

「一領地で起きている事は、我々も関与しにくい。偽善だと思われても仕方ないが、時期をみて犠牲者を弔う祈りをする予定だ」


 東の辺境伯領で起きた悪魔召喚の件とブローカー伯爵家の大量殺人の件は、教会にも大きな衝撃を与えていたみたいだ。

 だからこそ、ヘーベル枢機卿は事件の生き残りであるフラン達を特別な思いで見ていたのだろう。


「私は、目の前にある命を救うことしかできませんでした。なら、せめて目の前にある命を救う為の事をしたいと思います」

「スーザン殿下、立派な心掛けです。目の前の命すら救えない事の方が多いのです。スーザン殿下の心掛けは、きっと多くの人に伝わるでしょう」


 スーも、心の中で思う事があるのだろう。

 特に、ブローカー伯爵家の捜索では、直接陣頭指揮をとってブローカー伯爵とやり合っていたもんなあ。


 ガチャ。


「皆、待たせてしまった。申し訳ない」


 と、ここでガンドフさんが部下を引き連れて会議室に入ってきた。

 少し汗もかいていたけど、何かトラブルでもあったのかな?


「伯父様、何かあったのですか?」

「簡単に言うと、闇組織関連だ。一箇所アジトを発見したので、軍と共に部隊を向かわせたのだよ。副団長が向かっているし、元々私の隊は待機組だ」


 捜査指揮関連も含めて、調整が大変だったんだ。

 そりゃ、遅れて汗をかくわけだ。

 直ぐに話をする事になり、僕たちも席につきました。


「それでは、手短に話をしましょう。細かいところは、担当同士で調整しましょう」

「そうですな。メインは、年明けの王家に関するイベント警備です。今年はスーザン殿下のお披露目もあるので、特に厳戒態勢を敷く予定です」

「人神教や闇組織の件もあります。聖騎士団も、協力は惜しみません」


 年明けに王家の顔見せのイベントが予定されていて、多くの一般市民も集まるそうです。

 となると、テロ対策は厳重に行わないとならないし、万が一何かが起きた時の対策も必要です。

 王家の顔見せには教会関係者も参加するらしく、聖騎士団も警備につくらしい。


「間違いないが、シュン達にも何かしらの形で協力を依頼するだろう。その時には力を貸して欲しい」

「僕にできることでしたら、皆さんの力になりたいです。スーも絡む事ですから、尚更です」

「スーお姉ちゃんは、シロが守るよ!」

「「「頑張るぞ!」」」


 もちろん、スーだけでなく王家の人達も絡むので、僕も力になりたいと思っている。

 シロだけでなく、フラン達も何かの力になりたいと思っているみたいだ。

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