散歩の三百四十話 いよいよ収穫祭が始まります
司祭様の準備も終わった様で、僕達に向き直りました。
「それでは、今年の収穫を神に報告する」
司祭様の言葉に、僕達は真剣な表情になって祭壇に向き直りました。
そして、辺境伯家が立ち上がったのを合図にして、僕も椅子に座っていた街の人も立ち上がりました。
この時ばかりは、街の人も静かに神事を見守っています。
「我らが主たる神よ。今年も神の加護により、実り多き秋を迎える事が出来ました。これも神のお力の賜物で御座います」
司祭様が祈りながら、アオが作った女神像に祈りを捧げています。
この世界は天気予報もないし、灌漑設備の整備も充分ではない。
だからこそ、収穫の喜びを皆で分かち合っているんだね。
「ここに皆で収穫の喜びを分かち合うと共に、来年もどうか実り多き年になる様お願い申し上げます」
長々と司祭様が神に感謝を申し上げ、そして来年の豊作を祈願して司祭様の神への報告は終わりました。
うん、長かった。
僕だけでなく、他の人も神事の長さにちょっと疲れていました。
「あなた」
「あたっ」
辺境伯様も思わずだらりとなりそうだったので、エミリア様が辺境伯様のお尻をつねっていました。
うん、ケントちゃんの方がキチンと司祭様の神事を見ていたよ。
「辺境伯様、無事に神事が終わりました」
「うむ、ご苦労だった」
司祭様もタイミングを上手く見計らっていたのか、辺境伯様がエミリア様にお尻とつねられてシャキッとした所で側にやってきました。
司祭様も、辺境伯様の事は良く知っているんですね。
「よし、これから収穫祭のパレードを開始する。ものどもは支度を開始せよ」
「「「うおー!」」」
そして、辺境伯様の掛け声に、街の男が一斉にパレードの支度を始めました。
中には、台車に酒樽を乗せている人もいます。
「シュンお兄ちゃん。樽が乗ってるよ?」
「収穫祭のタイミングで、その年採れた麦を使ったお酒が出来るんだ。だから、お酒が出来ましたって街の人に知らせるのに酒樽を使うんだよ」
「そーなんだ!」
街の人にとって、新酒は待ちに待ったお楽しみなのかもしれないね。
よく見ると、屋台ではエールなどの飲み物が販売されていますね。
「お酒……」
「スー、今は止めなさい。全て終わってからにしましょう」
「はい……」
「「あはは……」」
スー、お酒が飲めなくてそんなに悲しそうな顔をするのはやめましょう。
というか、あなたはお酒を飲み過ぎて、東の辺境伯領で大惨事を引き起こしたでしょう。
ケーシーさんとテルマさんもスーの酒癖の悪さを知っている様で、ただ苦笑するしかありませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます