散歩の三百三十七話 複雑で難しい対応

 応接室に集まると、先代様が口火を切って話し始めました。

 難しい立場にある、辺境伯様とエミリア様を気遣う面もあるのでしょう。


「先ずは、シュンとアオに感謝を言わなければならない。結果はどうあれ、辺境伯領に潜んでいた闇組織の一味を捕らえる事に成功したのだからな」

「運が良かったのもあります。もし奴らが辺境伯邸を監視していなかったら、奴らの尻尾を掴めなかったと思います」

「それでも、奴らを捕まえた功績は大きい。奴らが口を割るかはともかくとして、脅威を減少させたのは間違いないからな」


 多数の実行犯を捕まえて、確かに脅威の減少にはなった。

 ただ、実行犯を全員捕まえたかどうかは不明の状態です。

 当然僕達も、気を緩める事はしません。


「まあ貴族同士の対応は俺等の仕事だから、シュンは特に気を病む事はない。どうせ内容が内容なだけに、辺境伯家の一存で決められないさ」


 辺境伯様も、手を広げてお手上げのポーズです。

 今回の闇組織の件は複数の貴族が絡んでいるので、対応も難しいだろうね。


「因みにケーシーとテルマの兄は、二人を見て相当驚いていたな。どうもケーシーとテルマの兄は、ケーシーとテルマは既に辺境伯領にいないと思っていたらしい」

「だからといって、闇組織に組みして辺境伯家に危害を加えて良いわけじゃないですよ」


 複雑な状況とはいえ、犯罪に手を出して良い訳がない。

 ケーシーさんとテルマさんの兄には、自分の罪を理解して欲しいものだ。


「ともかく、収穫祭を無事に終える事が大事だわ。その上で、闇組織を止めないとならないわね。残念ながら、軍は収穫祭の翌日に到着予定よ」

「奴らが増員してくる可能性もあるし、僕達も十分気をつけます」


 エミリア様も懸念している通り、まだ全てが終わったわけじゃない。

 そう思いながら、僕達は解散する事になりました。

 そして、僕の部屋の前にはスーが待っていました。


「スー、二人の様子はどうだ?」

「かなり気持ちが張り詰めていて、あまり良くありません。実の兄が大きな犯罪に関与していた事が、やはり心身の負担になっています」


 スーも親友とあって、かなり二人の事を心配しています。

 当面は、アオやシロ達を必ずそばに付けないと。


「アオちゃんの魔法で、二人には強制的に眠って貰いました」

「その方が良いだろうな。気持ちが張り詰めていると、一睡もできないだろうし」


 スーとアオの判断は、間違っていないだろう。

 ともかく大変だろうけど、二人にはゆっくりと休んで貰わないと。


「辺境伯様は何と仰ってましたか?」

「貴族同士のやり取りは、面倒だけど俺がやるってよ。後は、実行犯が全員捕まっていないから、とにかく気をつけないとって言ってた」

「そう、ですか。ありがとうございます」


 スーも、色々と思う所はあるだろうね。

 僕はスーと別れて、客室に戻りました。

 僕もしっかりと休んで、先ずは収穫祭を成功させないとね。

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