散歩の三百十六話 凄腕彫刻師?

 トントントントン、トントントントン。


「トリアさんって、包丁使いがとっても上手ですね」

「本当ですか? ありがとうございます。母から、侍従のスキルに関する事は一通り教え込まれましたので」


 トリアさんの包丁さばきはとても上手で、次々に肉や野菜を切り刻んでいきます。

 アオがいないから、とても貴重な戦力になっています。

 そのお陰もあって、あっという間に賄いに必要な仕込みは全部完了です。

 盗難防止にアイテムボックスに刻んだ物を入れておいて、準備万端。

 タンドリーチキンもどきは冷蔵魔導具に入れておいて、屋台の見えない所に置いておこう。

 もう暫くは、肉に味を染み込ませないとね。

 という事で、トリアさんと共にちょっと気になっている結婚式関連の所に行ってみよう。


「うわあ、本物の女神様みたいです。素晴らしい木像ですわ」


 屋台から呼ばれたアオがやっていたのは、一本の太い木を風魔法で加工して仮祭壇に設置する女神様の木像を作る事だった。

 リアルな女神様の木像にトリアは思わずうっとりとしていたけど、良く考えると僕とシロとアオは女神様に会っているんだよね。


「これ程の女神様の像は見たことがない。収穫祭のみで終わらすのは勿体ないな」

「では、街の教会に寄付しましょう。これだけ素晴らしい木像なら、教会関係者ならきっと喜んでくれると思いますわ」

「きれーだね!」


 アオの作った女神様の木像は、先代様にもエミリア様にも大好評です。

 ケントちゃんも、思わず両手を挙げてにっこりとしています。


「誰か、教会に行ってくれないかしら? 早速許可を取らないといけませんわ」

「エミリア様、俺が行ってくるぞ」

「宜しくね」


 猫獣人の職人が、胸を叩いてダッシュして行きました。

 これだけの木像なら、きっと教会も喜ぶでしょう。

 とはいえ、アオはまだまだだといわんばかりに木像へ細かい細工を続けており、どんどんと木像の出来栄えが上がっていきます。

 この木像は、今回の収穫祭の目玉にもなりそうですね。


「スー達はまだ打ち合わせをしているな。じゃあ、そろそろ肉を焼き始めるとするか」

「はい。お手伝いいたします」


 僕は屋台に戻って、トリアさんと共に昼食の調理を始めました。

 うーん、良い感じに良い匂いが広まってきたぞ。


「今回は、お好み焼きを作っていこう。焼きそばもあるけど、今日はキャベツたっぷりに、焼きそばソースをかけてみよう」


 僕は僕で、もう一つ粉物を試してみる事にしました。

 素材が良いから、ちょっとの手間で美味しくなるのは良いよね。

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