散歩の三百十四話 もしかしなくてもタコヤキを作る事に?
「流石にシュンに全てを任せるのは悪いから、ある程度は要望を聞くわよ」
エミリア様がフォローを入れてくれたけど、僕はまだずーんと落ち込んでいました。
すると、何故かシロが元気よく手を挙げました。
「シロ、タコヤキが食べたい!」
「「「タコヤキ?」」」
そう言えば、僕が道中の海がある子爵領でたこ焼きを作るって言ったよね。
流石にシロの説明ではここにいる人には分からないと思うので、僕は何とか復活してどういうものか説明する事にしました。
「たこ焼きってのは、一つの名称だと思ってもらえば。鉄板で粉物を焼くんですけど、鉄板に指二つや三つ分のくぼみができているんです。それをキリみたいなのでくるくる回しながら、丸く焼いて行きます。中は肉でも魚介でも、何ならチーズとかでも良いですよ」
「ほうほう、丸いくぼみのついた鉄板が重要な訳か」
僕が説明をすると先代様と職人が集まってきて、ふむふむと言っていました。
「うむ。お前ら、鉄板の加工は出来るか?」
「このくらい朝飯前だぜ。なんせ、俺らは何でも加工するからな」
おお、先代様の発破に職人が応えちゃった。
これはもしかしなくても、僕にタコヤキを作れという事でしょう。
嗚呼、屋台のメニューが増えると思ったら、シロが更に余計な事を言っちゃったよ。
「うんとね、タコヤキはね、木のお船に乗っているんだよ?」
「木のお船? シュン、どういう事だ?」
「薄い木の皮の端に切り込みを入れて組み合わせて、簡易的なうつわにするんです。タコヤキは、良くそのうつわに入れて販売しているんですよ」
「ふーん、そうか。おい、ちょっと厚めに鉋がけした物を持ってこい」
先代様の指示で良い感じになった木の削りかすを、うつわの形にします。
すると、周りの人の目が変わりました。
「これは良い物ですね。生活魔法で綺麗にしておく必要はありますが、わざわざ木をくり抜いたうつわを用意する必要がありませんわ」
「生活魔法を使える者なら数もいるし、何よりも汁物以外なら流用もできる。汚れれば捨てればいいし、処分も簡単だ」
な、何だかエミリア様と先代様が高評価してくれたけど、確かに使い捨てできるうつわってのが評価してもらっているポイントなのかもしれません。
「シュン様、凄いです! そんな事をお考えになるなんて!」
「すごーい!」
そして、何故かトリアさんの僕に関する評価が目茶苦茶高くなっています。
手を組んで目を輝かせているけど、前世の知識を応用しただけなんだよね。
ケントちゃんは何がなんだか分かっていなくて、周りが凄いって言っているから真似しているみたいですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます