散歩の三百五話 終わったと思ったら追加のお仕事が発生
夕方になり、書類整理も一息つきました。
「お、終わった……」
若干燃え尽きている西の辺境伯領の偉い人がいるけど、溜まっていた書類はだいぶ片付きました。
「これなら、明日には全て終わりそうですね」
「そうですね」
「一時はどうなるかと思いました」
スーが、ニコニコしながらケーシーさんとテルマさんと話をしていました。
屋敷の執事も職員も、大量の書類が片付いて笑みがこぼれています。
あっ、そうだ。
ちょっと気になった事を聞いてみよう。
「執事さん、今日の書類は僕達が見ても問題ないのですか?」
「全く問題ありません。重要な書類は、全て奥様の管理下に御座いますので」
確かに、今日の書類は大した内容のものではありませんでした。
その辺りのセキュリティ管理がしっかりとしているなら、全然問題ないですね。
かちゃ。
ガラガラガラ。
「そうそう。この辺りの書類は、決算とは関係ないものなのよ。見られても全然平気な、許可関係のものね」
ここで、台車に大量の書類を乗せたエミリア様が執務室に入ってきました。
も、もしかして、この書類も全てやらないといけないものなのかな?
すると、エミリア様がニコニコとしながらもとんでもない迫力を辺境伯様に向けてきました。
「あなた……」
「は、はい!」
「口約束だけで、キチンと書類に落とし込んでないものが沢山ありましたよ。今日各地を回ったら、こんなにも出てきましたわ」
「そ、それは、その……」
「常日頃、領主様は信用が第一と申しておりますよね?」
「えーっと、その……」
これは駄目だ。
この辺境伯様はノリが良いのは分かるのだけど、肝心な所でやらかすのもだいぶ分かりました。
恐らく街の人に軽くやるよと言って、書類に残さなかったのでしょう。
「あなた、明日は今ある書類とこの書類を全部終わらせて下さいね。まあ、明日は今日行けなかった所に行くので、また新たな書類が増えると思いますが」
「そ、そんなー!」
辺境伯様、叫びたいのは僕達の方ですよ。
僕もスー達も屋敷の人達も、全員が死んだ魚の目になっちゃったよ。
だって、辺境伯様が書類をやるイコール僕達もつきあわされるの確定じゃないですか。
「シュン、まさかここまで辺境伯様が書類を溜め込んでいたなんて思わなかったわ。辺境伯様のお小遣いを減額して、その分を依頼料の上乗せにするわ」
エミリア様が僕に申し訳なく話してくれたけど、辺境伯様はお小遣い制なんだ。
でも、辺境伯様はノリが良いからお金を浪費しそうな気もするなあ。
パタパタパタ。
「あっ、おとーしゃま、しろーい!」
続いて執務室に入ってきたケントちゃんが、真っ白に燃え尽きている辺境伯様を指さしていました。
どうも、最後のお小遣い減額がトドメになったみたいです。
ケントちゃん、お父様みたいな大人になっては駄目ですよ。
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