散歩の二百四十三話 エキシビションマッチその四
「この試合は、魔法を使った複合戦になります。魔法障壁装置を稼働させます」
ぶいーん。
魔法障壁を発生させる魔導具が稼働したので、僕とスーはマジックバッグから木剣を取り出します。
僕はショートソードの二刀流で、スーはレイピアを構えます。
「それでは、エキシビションマッチ二回戦開始!」
「「「うおー!」」」
辺境伯夫人様の合図で、観客がより一層盛り上がります。
そんな中、僕とスーは同時に宙に魔力弾を数個浮かべます。
そのまま、僕とスーは木剣を構えました。
ヒューン、ヒューン、ヒューン。
だっ。
「両者、魔力弾を放つと同時に駆け出した!」
僕とスーは、お互いに放たれた魔力弾を相殺する様にしながら舞台中央に突っ込んでいきます。
ズドドドーン。
「「はあ!」」
ガキン、ガキン!
「魔力弾を相殺すると同時に、激しい剣の応酬です!」
「すげー、何だこれ」
「今までの試合が何だったって感じだぞ」
僕とスーは接近戦では剣技を使い、離れれば魔法を放ちます。
息もつかせぬ激しい攻防に、観客は言葉も少なく固唾を飲んで見守っていました。
かくいう僕も、辺境伯様より派手な試合を長めにと言われているので、ここはスーの技を上手く迎撃する様にします。
だっ、だだ。
ズドドドーン。
「シュン選手もスー選手も、お互いに足を止めずに動き回ります。それでいて、正確な魔法と剣撃を繰り出しています」
「はあ!」
「せーい!」
スーも、最初の頃と比べると本当に強くなった。
今も毎日一生懸命に訓練をしているし、これからもっともっと強くなるだろう。
「残り一分です」
でも試合時間も残り少ないし、スーがここで満足しない為にも僕も少し本気を出そう。
ブオンブオンブオンブオン。
「あっ!」
「こ、これは。シュン選手が物凄い数の魔力弾を発生させた!」
「すげー、何だあれは」
「とんでもない数だぞ」
僕は一気に魔法弾を発生させた。
ヒューン、ヒューン、ヒューン。
ズドドドーン。
「くっ」
そして、一気にスーに魔力弾を放って飽和攻撃を仕掛けます。
スーは魔法障壁を展開して、懸命に魔力弾を放ちます。
ここで、僕は魔力弾の攻撃を一時的に止めます。
ドーン。
「あっ、前が」
スーの足元に魔力弾を放って、土煙を上げてスーの視界を奪います。
ぱりーん。
「おーっと、シュン選手がバリアブレイクを使ってスー選手の魔法障壁を破壊した! シュン選手がスー選手に剣を突きつけつつ、魔力弾で囲っている!」
「流石はシュンさんですね。降参します」
「スーは戦い方が綺麗すぎるから、もう少し細かなテクニックを覚えた方がいいですね」
「目隠しはスラちゃんも使っていたし、もっと勉強しようね」
「はい、ありがとうございます」
僕は魔力弾を消して、スーと握手します。
スーも完敗を認めていたけど、すっきりとした表情をしていた。
「スー選手がギブアップを宣言しました。シュン選手の勝ちです。しかしながら、流石は称号二つ持ちの冒険者同士の戦いでした」
「うおー! すげー試合だったぞ!」
「料理人のにいちゃんって、あんなに強かったのか」
「救護テントのねえちゃんも凄かったぞ」
パチパチパチ。
戦いを終えた僕とスーに、観客から大きな拍手が送られました。
こうして、エキシビションマッチも無事に終了です。
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