散歩の二百十九話 アオの対戦相手は要注意人物
ステージ側の辺境伯家席に行ってフィーナさんとフィーナさんのお兄さんに挨拶に行ったら、何故か渋い顔をしたフィーナさんのお兄さんが僕達を出迎えてくれた。
何かあったのかな?
「シュン、アオの対戦相手だが気をつけた方が良い。王都の貴族の息子が相手なんだが、前からフィーナの事を嫁にとうるさいのだよ」
「フィーナ、あの人嫌い」
「えっ!」
今回僕達は青コーナーなんだけど、赤コーナーにいるのは受付でもいた嫌な感じの貴族だった。
というか、見た目は三十代位なのにまだ八歳のフィーナさんを嫁にって、辺境伯家に喧嘩売っていない?
すると、スーが対戦相手の事を知っていた。
「もしかして、オオアク伯爵の嫡男ではないですか?」
「ああ、そうだ。フィーナを正妻にと言っているが、愛人が多くて子どももいる。浪費家でもあるから、おおかたフィーナへのアピールと併せて今回の優勝賞金を狙っているのだろうな」
名前からして酷い貴族だけど、それ以上に素行が酷すぎる。
フィーナさんを狙っているのも、辺境伯家の財産目当てなんだろうな。
「アオちゃん、アイツをやっつけてね」
フィーナさんとパールのお願いに、アオも触手を振って答えています。
そしてアオは、シロ達と共に青コーナーに向かっていきました。
すると、辺境伯夫人様がシロ達に近づいて何やら話をしていました。
僕達はセコンドー登録していないので、スーと共に辺境伯家席の一角をお借りします。
因みに僕達に付いてきた侍従は、フィーナさんとフィーナさんのお兄さんのお世話目的で辺境伯家席にいます。
実際にフィーナさんの飲み物を交換したりと仕事もしているので、全く問題ありません。
さてさて、もうアオの一回相手を見てみよう。
貴族らしいというか、鎖帷子の上にプレートアーマーを着込んでいます。
まだ兜は被っていないけど、防御力はピカ一でしょう。
そしてもうひとつ気になることが。
スーも、対戦相手の嫡男の装備に何か気がついた様です。
「あの鎧、恐らく剣も魔導具ですね」
「剣はまだ分からないけど、恐らく鎧には身体能力向上の効果があるだろうね。あの嫡男、少しだけ魔力を感じるな」
魔法使いが使うと威力を発揮する魔導具か。
こりゃアオも苦戦するかもしれないと思ったけど、ここでちょっとした疑問が。
「確か、この大会って魔導具禁止じゃなかったっけ?」
「あっ、確かに」
「武道大会では魔導具は禁止されている。魔法は良いが、あくまでも個人の力量で戦う必要がある。だからこそ、魔導具は禁止しているのだよ」
フィーナさんのお兄さんの言う通り、強力な魔導具を使ったら個人の力量なんて全く関係なくなる。
しかも、あの嫡男は武器だけでなく全身が魔導具です。
違反レベルを超えていて、逆に清々しいくらいです。
「とはいえ、母上が嫡男の装備に気が付かない訳がない。それでも咎めないとなると、つまりはそういう事だ」
「あの嫡男は堂々と違反しても、アオには勝てないだろうと」
「確かに、どんなに良い装備をしても使用者が駄目では使い物になりませんから」
辺境伯夫人様は、あの嫡男の事を良く知っている。
知っているからこそ、あえて違反をスルーしているんだ。
となると、既に嫡男の勝ちは無くなったとみて良いぞ。
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