散歩の百二十三話 悪魔召喚

「グ、グガア!」

「アガガガ!」

「な、何だ? 何が起きている?」


 突然、苦しんでいたならず者から紫色の光が溢れ出てきた。

 ならず者の余りの変貌に、辺境伯様も顔を歪めている。

 本当に一体何が起きているんだ?

 すると、紫色の光が宙に集まり、丸く纏まり始めた。


「ほほほ、いよいよですね。我らが神が現れますよ」

「ま、まさか。やめろ、お前には扱えない物だぞ!」

「今更何を。まあ、見ていなさい」


 聖騎士の偉い人が不敵な笑みを浮かべる司祭を止めようとするが、司祭は一向に意に介していない。

 その間にも、紫色の光の玉が一層激しく光りだしている。

 そして、紫色の光の玉がひび割れてきた。

 かなりの濃密な魔力が、紫色の光から漏れているのが分かる。

 それと共に、強烈な風圧が僕達を襲ってきた。


「おお、遂に神が顕現する時が! フハハハ!」

「く、これでは奴らに近づけない」

「何が起きているんだよ!」


 僕達は、吹き付ける風を腕で防いでいる。

 そして、司祭の高笑いの中で遂に紫色の光の玉が割れたのだ。


「gugaaa!」


 そして、紫色の光の玉が消えると、そこには異形のものが宙に浮いていた。

 何がなんだか分からない言葉を叫んでいる。

 そして、苦しんでいたならず者達は、意識を失って床に崩れ落ちていた。

 ならず者の目は白目をむき、正気がないように感じられる。

 

「あ、あれはバフォメットか?」

「まさか目の前に現れるとは。教会の説法に聞く、邪悪と名高き悪魔か」


 辺境伯様と聖騎士の偉い人が、目の前に現れた異形のものの正体を知っていた。

 羊なのかヤギなのか分からない頭に、背中に黒い大きな羽を持っていた。

 大きさは三メートル程で、真っ直ぐと僕達の事を見ていた。


「な、あれは何?」

「こ、怖いよう」

「大丈夫、シロが守るよ!」


 シロと手を繋いでいたフランとホルンも、バフォメットに怯えて思わずシロにぴたりとくっついていた。

 そんなフランとホルンに向けて、シロとアオが大丈夫だとニコリとしていた。


「こりゃ、さっきのならず者とは比べものにならない相手だな」

「でも、こんなのが街に出て暴れたら、街は大変な事になるよ」


 実行委員長と実行委員長の奥さんが、ならず者を倒す時に使っていなかった武器を手にとってバフォメットを見ていた。

 確かにこんな化け物が街で暴れたら、とんでもない被害が出るぞ。


「aaaa!」

「フハハハ、先ずはお前らから死ぬがよい」

「まずい、バフォメットが何かをやる気だ。全員防御態勢だ!」


 突然、バフォメットが両手を広げながら咆哮し始めた。

 僕達は辺境伯様の指示に従って、魔法障壁を展開した。


 その瞬間だった。

 目の前で予想外の事が起きたのだ。

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