散歩の百十八話 ワイワイと夕食タイム

「楽しく盛り上がっておりますな」

「我々も花見祭りをチラッと見ましたが、大変な盛り上がりでしたな」


 皆が笑い合っていた所に、辺境伯様と聖騎士の一団がやってきた。

 三十人ほどの聖騎士の一団も、鎧を脱いで騎士服姿になっていた。

 聖騎士も、楽しそうにしている子ども達を見て思わず笑顔になっていた。

 

「そういえば、何人かは聖騎士を知っているか。前回の巡回は今の司祭が赴任する前か」

「そうだな。確かに今の司祭になってからは、聖騎士の巡回はなかったな」


 先代様と実行委員長が話をしているけど、どうも聖騎士は定期的に各領地を巡回している様だ。

 となると、聖騎士は今の教会の現状を知らなかったのかもしれない。

 すると、パーティルームに更に追加人物が現れた。


「おお、全員揃っているな。こちらも色々動き出したぞ」

「そうか、そっちも動き出したか」


 パーティルームに姿を現したのは、ギルドマスターと副ギルドマスターだった。

 辺境伯様と何か話をしているけど、一体何だろう?


「シュン、もしかしたらギルド内に教会と繋がっている者がいるのではないかと推測しただろう?」

「はい。あっ、もしかして疑いのある人が動き出したんですか?」

「そうだ。丁度今日花見祭りが終わって、俺達がお館様の屋敷に行くとギルドの連中に言ったんだよ。頭の痛い事に、何人も動いた奴がいたぞ」


 ギルドマスターが苦笑しながら話をしてくれたけど、これで冒険者ギルドの怪しい人物も洗い出せたという訳だ。

 そして辺境伯様が、僕達に向かって話を始めた。

 

「現在、我が領地の騎士が教会を監視している。更には、この街から各地に通じる門も閉めた」

「お館様、という事は今夜決行かい?」

「そうなる。なので、申し訳ないがお酒は出せないのだよ」

「なーに、全て片付けてから祝杯を上げれば良いんだよ」

「「「そのとーり!」」」


 頃合いを伺って、教会に一斉に乗り込むつもりらしい。

 実行委員長達もバッグから武器を持っていて、やる気満々で答えていた。

 というか、奥様方に実行委員長の娘さんもメイスを持っているぞ。

 

 とまあ、話はここまでにして早速食事に入ります。


「一時期開催が危ぶまれた花見祭りだが、皆のお陰で盛大に終える事ができた。まだ気は抜けないが、今は存分に食事を楽しんでくれ」

「「「おー!」」」

「それでは乾杯だ」

「「「乾杯!」」」


 辺境伯様の音頭で、食事が始まった。

 全員がジュースで乾杯すると、食事にありついて行った。


「シュンお兄ちゃん、このお肉美味しいね」

「カレー味のお肉だよ」

「これならいっぱい食べられるよ」

「そうか、良かったな。慌てずにゆっくり食べようね」


 辺境伯様の屋敷の料理人は、肉にカレーを擦り込んで焼いた料理を考案したようだ。

 シロとフランとホルンだけでなく、他の子ども達もカレー味のお肉を美味しそうに食べていた。


「ねーねー、一緒に食べていい?」

「いいよ。こっちにおいで」


 女性冒険者と実行委員長の娘さんのテーブルにも、子ども達が料理を持ってきながらやってきた。

 よく見ると、商店街の実行委員や辺境伯様の所に加えて聖騎士の所にも子ども達が向かっていた。

 当然ながら、全員が子ども達と一緒ににこやかに料理を食べていた。

 どうも子ども達は花見祭り中接客を頑張ったので、人見知りを少しなくなった様だ。


「皆とても良い笑顔ですね。このまま順調に大きくなってくれればいいですね」

「そうだな」


 にこやかに子ども達を見つめる先代奥様の言葉に、先代様が深く頷いていた。

 こうして食事は、和やかな内に終わったのだった。

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