散歩の百十三話 フランとホルンの魔法訓練

 そんなこんなで、花見祭りが始まって一週間が経った。

 相変わらず大勢の花見客が訪れていて、毎日大忙しだ。

 そんな中でも本職は冒険者なので、毎朝の訓練は続けています。

 僕は、決してカレー料理人ではないですよ。


「じゃあ、そろそろ魔法を使った訓練をしましょう」

「「はーい」」


 今日からフランとホルンの魔法訓練もバージョンアップ。

 魔力循環も上手く出来る様になったので、実際に魔力を使ってみます。


「じゃあ、フランはシロと一緒に訓練しようね」

「うん!」


 フランは水魔法と身体能力強化が使えるが、今日はシロと一緒に身体能力強化の練習です。

 シロとフランは、すっかり仲良くなったなあ。


「ホルンちゃんは聖魔法使いだから、私とこのゴリラのお兄ちゃんとやろうね」

「はーい」

「うむ、宜しく頼む」


 ホルンは聖魔法に特化しているので、同じく聖魔法に特化しているスーとゴリラ獣人の格闘家と一緒に練習します。

 因みにゴリラ獣人の格闘家は子どもに大人気で、花見会場の治療班では一番人気だそうです。


 アオとリーフは、スライム同士で魔法の訓練をしています。

 こちらも共にスライム焼きの苦難を経験しているので、とても仲良しです。

 アオとリーフはお互いにふよふよとしながら、何か話をしているようです。


 さて、僕はというと他の人と訓練をしています。


「あんちゃんは格闘も使えるからな。良い訓練になりそうだぜ」

「シロとアオの相手をしているだけですがね」

「謙遜するなよ。身体能力強化した獣人とやり合うのだから、少なくとも回避力はピカイチだ」


 僕は女性冒険者の三人と対峙しています。

 武器はないけど魔法ありのルールです。

 まあ短時間の訓練だから、きっと大丈夫だろう。

 何よりも、ここには回復魔法が使える人が沢山いる。


「よし、両者構えて。始め!」


 獣人の兄ちゃんが合図をしたら、剣士のお姉さんが突っ込んできた。

 

 ズドーン。


「せい!」

「はあ!」

「うおっと、危ないぞ」


 剣士のお姉さんの背後にシーフのお姉さんが隠れていて、更に魔法使いのお姉さんが風魔法を放ってきた。

 結果的に同時攻撃になる様に、時差で攻撃してきたんだ。

 僕はお姉さん二人の攻撃を避けつつ、放たれた風魔法を魔法障壁で防ぐ。


「くそ、ちょこまかと素早いな」

「中々攻撃が当たらないぞ」


 流石に女性冒険者はシロとアオよりも遅いので、三人で攻撃を仕掛けてきても何とか防げる。

 僕からは攻撃をしないけど、防御訓練にはちょうど良い。

 回避を続けていき、タイムアップ。


「はあはあはあ。くそ、攻撃が当たらないぞ」

「強いと分かっていたが、ここまでとはな」

「もっと訓練が必要ですね」


 女性冒険者達は、息を整えながらさっきの訓練の反省をしていた。

 単純にスピードに慣れていないだけで、コンビネーションは良かったと思うな。

 さて、軽く汗を拭いて花見会場に向かわないと。

 そう思った瞬間だった。


 ズドーン。


「ぐはぁ!」


 突然背後からの物凄い衝撃によって、僕は吹っ飛ばされてしまった。

 い、一体何があったんだ?


「あ、失敗しちゃった」

「シュンお兄ちゃん、大丈夫?」


 地面に転がったまま衝撃のあった方を見ると、手を突き出しているフランと慌ててこちらにやってきたシロの姿があった。

 もしかして、フランが水魔法を放とうとして方向を失敗した?


「シュンお兄ちゃん、大丈夫?」

「折角だから、ホルンの治療でシュンさんを治しましょう」

「うむ、ちょうど良い訓練だ」


 そして、聖魔法を勉強していたホルンによって僕は治療されていく。

 うーん、フランは魔力制御をもっと勉強しないと駄目だな。

 薄れいく意識の中で、僕はそんな事を考えていた。

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