散歩の八十九話 教会前の看板

 僕とスーとシロとアオに加えて、実行委員長も教会と奴隷市場に行く事になった。

 そう思ったら、実行委員長の他に更に同行者が増える事に。


「にいちゃん達が優秀な冒険者だとしても、教会と奴隷市場は一見様お断りだ」

「俺達も、一緒に行ってやるぞ。なあに、挨拶ってやつだ、心配するな」


 商店街の屈強な店主が、何人も僕達に同行すると言い出した。

 

「あんた、しっかりやってくるんだよ」

「あの馬鹿どもを少し黙らしてくるんだよ」

「「「おう!」」」


 おかみさん達も、店主を止めるどころか煽っているぞ。

 うん、これはもしかしなくてもとんでもない事になりそうだ。

 結局、全員で十人の大人数で教会と奴隷市場に向かう事に。

 こんな大人数だと、逆に周りから目立ちそうだ。


 そして市場から歩いて十分で、最初の目的地である教会に到着。

 うーん、休息日だというのに教会は全く賑わっていないぞ。

 普通だったら、お祈りをする人が沢山教会に訪れるはずだよな。

 教会の周りを歩いている人も、教会の中に入る気配がない。

 教会の周りにある商店にはお客が入っているから、本当にぽっかりと教会だけスペースが空いている。


「とうとう閑古鳥が鳴き始めたか」

「あはは、いい気分だ。散々迷惑をかけられていたかならあ」


 教会の余りの惨状に、店主が指をさして笑っている。

 商店街と教会との間で、相当のいざこざがあったんだな。

 じゃなければ、教会を指さして笑うことなんてないよな。

 そんなこんなで、僕達は教会の前に到着。

 すると、謎の看板が教会の前に立っていた。


「なになに? 人間以外は教会への立ち位置を禁ずる。入場料五万ゴールド、治療は百万ゴールドからで、司祭様への面会は一千万ゴールド、何じゃこりゃ?」

「何だかとっても高いね。シロとアオも教会の中に入れないのかな?」


 僕は看板に書かれている内容を見て、思わず声を上げてしまった。

 人間以外の立ち入りを禁止する事は何となく予想できていたけど、まさか入場料も取っていてしかもとんでもない高額だ。

 治療も高額だし、これでは街の人の治療が行われないのもよく分かる。

 おまけに人間以外立ち入り禁止と看板に書いてあるので、シロとアオも僕の袖を引っ張って不安そうに見上げていた。


「こりゃ酷いな。この前来た時には、こんな看板なんて立っていなかったぞ」


 実行委員長も看板を見て困惑している。

 まだ綺麗な看板なので、最近設置されたものなんだろう。

 店主達も、困惑した表情のまま看板を眺めていた。

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