散歩の六十九話 偽物はご退場
カタコトカタコト。
「すー、すー」
「ぐー、ぐー」
色々とあった早朝のトラブルを切り抜けて、今はお昼過ぎ。
馬車はゆっくりと子爵領に向けて進んでいく。
昼過ぎから、シロとスーは僕の膝を枕にしてすやすやと眠っている。
うーん、スーは結構豪快なイビキをかいているなあ。
朝が早かった事もあったけど、それとは別の理由で寝ているのだ。
じーーー。
そして、アオが僕の頭の上に乗っていてじっと見つめている。
前ではなく後ろをだ。
時々、何で効かないんだとかバレたかとかヒソヒソ話が聞こえてくる。
実はお昼休憩の時に、後ろの人が僕達がちょっと目を離した隙に何かを入れた様だ。
僕が気付く前にシロとスーがバクバクと食べちゃったので、直ぐに効果が出てしまった様だ。
因みにアオは警戒してか、昼食を全く食べなかった。
状態異常ってステータスに出ていたので異常回復の魔法を使えば治るけど、せっかくなのでお仕置きして貰いましょう。
道中出てきた魔物とかはアオにお願いして倒してもらい、それ以外はアオがずっと後ろの四人を監視していた。
今朝アオがレッドスコーピオンを騙った三人組を倒すのを後ろの人も見ているので、まるでヘビに睨まれたカエル状態だ。
無事に子爵領の防壁に到着。
そして、確認を行なっている兵に一言伝えた。
「うん? その二人はどうしたのか?」
「危うく後ろの四人に昏睡強盗にあう所でした。薬が効いていて、まだ寝ています」
「「「「ビク!」」」」
「何だと!」
うん、兵の目の前でビクッてしているから、四人はかなり怪しいと見られた様だ。
僕達は馬車から降りて兵に話をしつつ、後ろの四人は取り調べを受けることに。
因みに後ろがつっかえているのもあって、馬車の人とはここでお別れです。
「二人から、睡眠薬の成分が検出されました。直ぐに回復魔法をかけます」
「真偽判定で、四人は罪を犯していると判明しました」
「持ち物から睡眠薬が見つかりました。盗品と思われる物もあります」
おーおー、次々と証拠品が出てきますね。
更に身分証も偽造していた事が発覚。
四人はあえなくドナドナされていった。
「うーん、あれ? ここは?」
「よく寝たよ!」
そして兵の治療を受けたスーとシロは、目を覚ましたら子爵領に着いていてびっくりしていた。
そして、僕が事の経緯を話すと更にびっくりしていた。
本当は僕の回復魔法でも目を覚ます事は分かっていたけど、命に別状はないのは分かっていたし兵の治療を受けた方が何かと証拠にもなる。
うーん、かなり悪どい考えだな。
「奴らは指名手配犯だった。変装していた様だがな」
「そうだったんですね。捕まって良かったです」
「スライムに睨まれていて怖かったって言っていたよ。この紙をギルドに渡すと、報奨金が出るぞ」
「有難うございます」
防壁での手続きは無事に終わり、教えて貰ったギルドに向けて歩き始めた。
因みにシロとスーは、あの四人の術中にはまってしまってショボーンとしていた。
「うう、眠っちゃったよー……」
「ちょっと悔しいです……」
「まあ、僕もおかしいと分かったのは少し後だったし、良い経験だと割り切ろう」
「「うう……」」
あらら、だいぶ落ち込んでいるな。
夕食は、美味しい所でも探して食べる様にしよう。
「ここがギルドなんだ。人がいっぱいだね」
「ちょうど夕方だから、依頼を終えて戻ってくる人が多いんだよ」
「へー、そうなんだ」
ギルドに着くと、多くの人でごった返していた。
よく見ると、色んな種族の人がいるぞ。
東の辺境伯領に近づいてきた証拠だ。
「はい、捕縛対応の受付完了です。獲物の買取と併せて、解体場での支払いとなります」
そして、指名手配犯の捕縛と獲物を売却しようとした時だった。
「シュンお兄ちゃん、シロお金いらない……」
「私もです。寝ていただけなので」
どうも馬車で一緒だった四人を捕まえた時に寝ていただけだったので、何もしていないと思っていた様だ。
「いや、二人がいてくれたからあの四人を捕まえる事が出来たんだ。お金を受け取る権利はちゃんとあるよ」
「「でも……」」
「大丈夫だよ。ほら、二人の分ね」
僕は無理やり二人にお金を渡しておく。
僕としてもわざと二人を起こさなかった事もあり、罪悪感もあるのだ。
「じゃあ、今日稼いだお金で、皆で美味しい物を食べようか?」
「うん! それが良い!」
「その案でお願いします」
という事で、ギルドの職員からお薦めの宿と食堂を教えて貰って、皆で食べに行く事にした。
「お肉美味しいよ!」
久々に美味しい料理にありつけたというのもあり、今日の夕食は皆大満足だった。
宿もちょっとグレードの良い所にして、皆でふかふかのベッドを堪能したのだった。
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