散歩の四十四話 新たな依頼

「直接会った事はないが、あの女性は二人の教育係だったと聞いている」

「だから二人、もあの女性には頭が上がらないんですね」


 その日の依頼が終わった後、受付で手続きをしていたらギルドマスターに呼ばれたので皆んなで個室に向かった。

 事の顛末を聞くと、何故あの女性が二人に対して強気で出るのかが理解できた。

 というか、教育係なら二人がもう少しマトモな人間になる様に教育しろよと言いたい。


「罰金もその女性が持ってきたという。伯爵の手紙も持っていた。暫くは、その女性が二人の教育をするらしいぞ」

「そうですか。でも、僕はまだ心配です」


 ギルドマスターは事が落ち着いたと少し安心した表情をしていたが、僕はまだ心配している。

 勿論他のメンバーも同じ表情をしている。

 僕達の事を、ギルドマスターは不思議に思っていた様だ。


「何だか、心配そうな表情をしているな」

「はい。僕はあの女性が二人よりも危険だと思っています。シロもアオも警戒をしています」

「私もそう感じました。何を考えているか、よく分からない目をしていました」

「成程、シュン達は直接会っているからその女性を危険と感じたのか。はあ、なかなか上手くいかないな」

「まだFランクに上がったばかりの冒険者の感想ですが」

「この前も言った通り、シュン達の事は高く評価している。そのシュン達が危険と判断したのだ。何かあると踏んで良いだろう。旦那にも話をしておこう」


 辺境伯様が動いてくれれば、あの女性も勝手な事はできないはずだ。

 ここはギルドマスターにお願いして、三人への対応をしてもらおう。

 そんな中、ギルドマスターが別の話題をし始めた。


「さて、あの三人の事はここまでにしておこう。シュン達に仕事の話がある」

「どういった話でしょうか?」

「メインは調査依頼だ。この街から歩いて二時間ほどの所に小さな村がある。その村の周囲でゴブリンが確認された。宿のメンバーと合同になるが、ゴブリンの巣の位置を見つけて欲しい。出来ればゴブリンの種類も確認して欲しい」

「分かりました。ゴブリンの討伐はどうしますか?」

「下手に刺激しないで良い。村を襲うゴブリンがいれば退治しても構わないが、基本は安全を考慮して討伐隊を送る事になる」

「分かりました。皆んなも大丈夫かい?」

「大丈夫だよ!」

「はい、大丈夫です。早く村を安全にしてあげないと」

「有難う。明日一日は準備に充てて、明後日に街を出発するスケジュールとしよう」

「「「はい」」」


 今までも薬草採取の時に出てきた魔物などを倒す事はあったけど、本格的な討伐は初めてだ。

 調査依頼とはいえ、準備をしっかりとしておこう。


「いよいよ俺達にも魔物関連の依頼が来るようになったか」

「はい。ですので、念の為に明日は色々装備を整えようと思います」

「その考えには俺らも賛成だ。ついでだから、ギルドに行って情報を集めておこうか」


 宿に戻って皆んなに話をすると、初めての討伐関連の依頼で士気が上がっていた。

 場合によっては、その後編成される討伐隊に選ばれる可能性もあるし、とてもやる気になっていた。

 しかし、僕達にはこの時はわからなかった。

 このゴブリン関係の依頼に伴いとんでもない大事件が勃発する事を。

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