散歩の四十話 シュン達の評価
「この後はどうするのですか?」
「バクアク伯爵の手には乗らないさ。守備隊長には、当面の警戒の強化と街に入る者の身分照会の強化を指示する」
「畏まりました。丁度ならずものが他の領地の者でしたので、良い口実になります」
既にあのような事故があった後なので、かなり警戒をして巡回しているそうだ。
なので、ある意味巡回を正当化する正式な理由づけにもなる。
「そして、君達自身にも警戒してもらう事になるだろう。君達にはスーもいるのだが、それ以上に期待の新人という事になっている」
「期待の新人、ですか?」
辺境伯様から、何だかとんでもない事を言われたぞ。
僕達が期待の新人なの?
「そこからは私が説明しましょう」
僕達がはてな顔でいると、ギルドマスターが助け舟を出してくれた。
「皆は新人講習を受けたけど、あれは新人冒険者の実力をはかる意味もあったのよ」
「えーっと、何となく分かっていました」
「そしてシュンとシロは最高評価を得ている。あの二人の前だったが、スーも中々の評価だったぞ」
「最高評価って。でも、他にもそういう評価を受けた方はいるのでは?」
「昨年はいなかったぞ。一昨年も確か二人だったかな? それぐらい君達は評価を受けたのだ」
僕としては、ひたすらギルドマスターの攻撃を避けていただけの様な気もする。
正直、シロがどんな戦いをしていたのか見ている余裕もなかったし。
「別に実技だけの評価ではない。その前の座学も含めての評価もしている。ただ強いだけの奴はいたが、それでは冒険者としてもあるが人として駄目だ。シュンとシロは周りもよく見ているし、冒険者としての評価も高い。何より、新人なのに指名依頼が入っているのが証拠だろう」
「ありがとうございます。でも、依頼者に恵まれた面もあるかと思います」
「謙遜するな。宿の主人も高く評価していたぞ。毎朝きちんと訓練をしているのも、良い傾向だ」
うーん、ここまで評価されると何だかこそばゆいなあ。
シロとアオは素直に喜んでいるが、スーも少し恥ずかしい所があるようだ。
「今回の救出の件もあって、シュンとシロは余計に注目されるだろう。初心者講習の際もそうだったが、あの二人に逆恨みをされる可能性は十分にある」
「忠告ありがとうございます。明日からも十分気をつける様にします」
ギルドマスターの言いたい事も分かったので、当分は僕達も色々と注意をする様にしておこう。
そして、辺境伯様がとある情報を教えてくれた。
「捜査の結果次第だが、バクアク伯爵には厳重に抗議した上で罰金を更に増額
する事を返信する。もし罰金が支払われれば、あの二人は解放される事になる。そうなれば、自然と二人は君達を意識する事になるだろう」
「有難うございます。そこまで分かれば、我々も対策を打つ事ができます」
「こんなつまらない事で君達に被害が及ばない様に、こちらも十分に警戒をする」
話し合いはこれで終了し、辺境伯様がまたもや夕食をご馳走してくれた。
二回目なので、少しは緊張がほぐれて会話をする余裕は出来た。
「うーん、美味しいよ。おかわり!」
でも、僕もスーも、シロやアオの様にまたもや平然とおかわりをする事は出来ないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます