散歩の三十三話 辺境伯様との面会

「お館様がお見えになられます」


 家宰さんが応接室のドアを開けて教えてくれたので、僕は急いで立ち上がった。

 スーがお辞儀をしたので、僕もお辞儀をする。

 シロとアオも一応お辞儀をしているが、お菓子のカスをほっぺにつけている。

 中には武人の様に鍛え上げられた肉体の持ち主が現れた。

 少し白髪の混じった茶髪を短く刈り込んでいる。

 

「楽にしてくれ。ここは公式の場ではないからな」


 辺境伯様に声をかけられて、僕達は顔を上げた。

 厳つい顔で、眼力が凄いぞ。


「辺境伯様には、初めてお目にかかります。私はシュンと申します。どうぞ宜しくお願いします」

「うむ、貴族の様なキチンとした挨拶だな。この辺境を預かっている、サウスランド辺境伯だ」

「シロだよ。この子はアオって言うんだ」

「はは、元気なお嬢ちゃんだ。シュンと言ったか。子どもの返事なのだから気にするな」

「はい、有難うございます」


 シロが元気よく挨拶をしてきたので、注意する所だった。

 今度、挨拶のやり方でも教えないと。

 サウスランド辺境伯様がにこやかに応対してくれたので助かったよ。


「辺境伯様、お久しぶりに御座います。この度は色々とご迷惑をかけまして、大変申し訳ありません」

「スー嬢に対して謝らなければならないのはこちらの方だ。書類が偽造されていたとはいえ、あの二人と組ませる意図は全くなかったのだ」


 おや?

 スーとサウスランド辺境伯様との話を聞いていたら、書類偽造の話が出てきた。

 一体何だろう?


「シュンには話した方が良いだろう。元々スー嬢は我が領の騎士と組む予定だったのだ。しかし、とある貴族が書類を偽装してあの馬鹿二人と組む事になったのだよ」

「確か捕まったのはどこかの伯爵家の三男だと聞きましたが」

「書類偽造に関わったのは、もっと上の人間だ。シュンは知らぬと思うが、国の癌たる勢力がいてのう」


 サウスランド辺境伯様は溜め息をつき、スーも苦笑している。

 よっぽど悪い奴なんだろう。

 そして、サウスランド辺境伯様が僕に改めて向き直った。


「詳しくは話せないが、スー嬢はとある目的の為に各地の辺境伯を尋ねる事になっている。シュンよ、悪いがスー嬢の為に各地への旅に同行してくれないか?」

「それは問題ありません。元々僕も冒険者をしながら、各地に向かう予定でしたから」

「大丈夫だよ!」


 サウスランド辺境伯様から、スーが各地の辺境伯に向かうのに同行してくれと言われたけど、元々各地をまわる予定だから全く問題なし。

 シロもアオも問題無しと言っている。


「ただ、もう少し南の辺境伯領にて冒険者としての修行を積み、春頃に次の辺境伯領へ向かうつもりです」

「その方が良いだろう。君達は一流の魔法使いと聞いているが、鍛錬を積むことは間違いではない」


 とりあえずスーの話としてはこれで終わりらしいが、サウスランド辺境伯様があの二人の事についても教えてくれた。


「あの二人は強制奉仕活動を一ヶ月する事になる。貴族特権もあるが、あの二人は未成年なのでな」

「中々対応が難しいですね」

「一応初犯でもあるからな。次は容赦しない。スー嬢から奪った金については、もう少し掛かりそうだ。済まないが、対応が終わったら改めて連絡する」

「いえ、色々とご配慮頂き有難う御座います」


 あの二人も奉仕活動で大人しくなってくれればいいけど、多分無理だろうな。

 これで話し合いは終了し、食事も頂く事になった。

 何だか高級な料理が出てきて、かなり緊張しながらの食事になった。


「おかわり!」


 うん、平然とおかわりを要求できるシロとアオが羨ましい。

 そして、宿に送ってもらった時には、気疲れからか直ぐに寝てしまったのだった。

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