散歩の十三話 初心者冒険者達

「ただいま戻りました」

「ただいま!」

「お帰りなさい。綺麗なお洋服を買って貰ったね!」

「うん!」


 宿に戻ると、店主の娘さんが出迎えてくれた。

 早速シロの服を褒めていて、アオと一緒に頭を撫でている。


「あと三十分したら夕食だよ」

「はーい」


 ちょっと夕食になるのだが、折角の服を汚してはいけないので部屋に戻って着替えて下に降りていく。

 一階の食堂っぽい所に向かうと、他にも冒険者が食事をとっていた。

 大体十人位いたけど、食事を頼まない人もいるので宿にはもっと宿泊している人が多いという。


「こんばんわ!」

「お、元気な嬢ちゃんだな」

「この宿にいるという事は、俺達と同じく初心者か」


 感じの良さそうな人達だが、確かにあまり強い感じはしなかった。

 という事は、この人達も冒険者になりたてなのか。


「お兄ちゃん達も冒険者なの?」

「そうだ。今日登録したばっかりだ」

「そうなんだ、シロも今日冒険者登録したばっかりなんだ」


 シロは問題ないと思った人には、その人の容姿を気にすることなく声をかけるなあ。

 今も厳つい顔の若者に、平気で声をかけている。


「ここの宿はランクが低い者向けの所だ。だから、この宿で初めて顔をみせるのは登録したばっかりなんだ」

「ほら、話もいいけどご飯も沢山食べな」

「うわあ、美味しそう!」


 ここで店主とおかみさんっぽい人が、大皿料理を持ってきた。

 シロとアオは、目の前に出された野菜の盛り合わせに目が釘付けだ。


「だから、ギルドからも新規登録者向けに案内しているのですね」

「そうだ。明日講習があると思うが、ランクが二つ上がればこの宿は卒業だ」


 既にシロとアオは目の前の料理にかぶりついているので、僕が店主に簡単に話を聞いてみた。

 確か貰った手引には、色々と書いてあったな。

 もう一回寝る前に読んでみよう。


「うーん、美味しいよ!」

「そうかい、いっぱい食べな」

「うん!」


 シロはアオと共にもりもり野菜炒めを食べている。

 おかみさんも、その食べっぷりに目を細めていた。

 僕も食べるけど、味付けが塩だけじゃないような。

 何か他の調味料も使っていそうだ。


「おかみさん。塩以外に何か調味料を使っていますか?」

「ショーユという異国の調味料を使っているよ。確か市場にも扱っているお店があるよ」

「分かりました。今度寄ってみます」


 うん、どこか懐かしい味がすると思った。

 これは是非手に入れなければ。

 僕とおかみさんの会話に、他の冒険者も食いついてきた。


「なんだ、兄ちゃんは料理ができるのか?」

「そうだよ、シュンお兄ちゃんの料理は美味しいよ!」

「そうかそうか。なら、合同依頼した時には料理をたのもうかな」

「えっと、簡単なものでよければ」


 冒険者は料理が苦手なのかな?

 何だか期待をしている視線を浴びているのですが。

 シロとアオも一緒になって僕の事を見つめないの。


 明日は早く起きてギルドに行かないといけないので、食後は直ぐに寝る事に。

 シロとアオを生活魔法で綺麗にして、ベッドに入る。

 入るのだが……


「シロとアオよ。何故同じベッドで寝ている」

「だって、寒いんだもん!」


 上のベッドで寝ていたら、何故か下のベッドで寝ていたシロとアオが潜り込んできた。

 しょうがないなと思いつつ、そのまま皆で寝るのだった。

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