異世界のんびり散歩旅

藤なごみ

散歩の一話 異世界到着

 ちゅんちゅん。

 ちゅんちゅん。


 サーっと風が頬を撫でる。

 少し寒さは感じるが、日差しの暖かさも感じる。

 そんな中、僕はゆっくりと目を開けた。

 少し目をパチパチとさせて辺りを見渡した。


「ここが新しい世界か、何だか地球と変わりない気がするな」


 僕は、とある世界のとある街道の近くに立っていた。

 周囲に人はいなく、僕達だけが立っていた。

 僕と猫獣人とスライムが、ぽつんと街道に立っている。

 街道は土だが、思ったより綺麗に整備されている。

 辺りは平原で、所々に木々が立っている。

 鳥が辺りを飛んでいて、のどかな田舎って感じだ。


「ねえ、シュンお兄ちゃん。どっちに行くの?」

「シロ、ちょっと待ってな。今、地図を出すよ」


 髪の毛も肌の色も真っ白の猫獣人のシロが、僕の顔を見上げながら服の袖をちょんちょんと引っ張っている。

 僕は目の前にワールドマップを開いて、現在位置を確認した。

 シロの頭の上にはちょこんと青っぽい色のスライムのアオが乗っていて、シロと共にワールドマップをじろじろと眺めていた。

 僕は二人の様子に少し微笑みながら、ワールドマップを確認していく。


「このまま街道を真っ直ぐ進んでいけば、南の辺境伯の街に着くみたいだよ。でも今日は野宿かな?」

「分かったよ! よーし。じゃあ、出発だ!」


 シロとアオは、元気よく手をあげて先頭をきって歩き始めた。

 トコトコとみんなで街道を歩いて行きます。

 アイテムボックスに入っている手持ちの荷物を確認したけど、数日分の食材もあるし野営に必要な道具も揃っている。

 特に焦る事もないので、のんびりゆっくりと行きます。


「シュンお兄ちゃん、これからどうするの?」

「先ずは街に行くよ。冒険者として登録して、依頼をこなしながら各地を旅する予定だよ」

「そうなんだ。シロに冒険者できるかな?」

「大丈夫だよ。シロもアオも冒険者できるよ。それに、暫くは無理のない依頼をしていくからね」

「はーい」


 シロとこれからの事を話をしながら、僕は街道を歩いていきます。

 おっと、シロとアオに大事な事を言わないと。

 僕達の事に関わる、とても大切な事だ。


「シロ、アオ。僕達が異世界から来た事は言っちゃダメだよ」

「うん、分かった。ナイショだね」

「そう、ナイショだよ」


 シロとアオは僕の話を聞いて、再び元気よく手を上げていた。

 そう、僕達は異世界からこの世界にやってきたのだ。

 何だか不思議な思いで、まだ僕の前を元気よく歩くシロと頭に乗っているアオの事を見ていた。

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