千百三十七話 結婚式のお手伝いの前日準備
夏休みは、お仕事をしつつ学生らしく遊ぶようにと言われています。
でも、前世も含めて遊んだことが殆どないから遊ぶというと冒険者活動が殆どになります。
ちびっ子たちがいると薬草採取をすることが多いのですが、今日は久々に結婚式のお手伝いをすることになりました。
今回結婚式のお手伝いをすることになった人は辺境伯領の冒険者で、僕たちは勿論の事ちびっ子たちも顔見知りの人です。
「「「おめーなー、何でこの辺境伯領冒険者ギルドのナンバーワン受付嬢を射止めたんだよ……」」」
「あはは、何ででしょうね……」
仕事を終えた前日の夕方から冒険者ギルドの飾り付けとかをしていたのだけど、他の冒険者が新郎に絡んでいました。
新郎はとても大人しい性格で冒険者としても堅実に稼いでいたので、一獲千金を狙う冒険者よりも早く出世していきました。
そんな新郎はとても優しいので、実は受付嬢の間でも人気だったそうです。
なので、実は新婦も他の受付嬢に絡まれていたみたいです。
オラオラ系の冒険者が新郎に絡んでいたけど、何だかなるべくしてなったみたいですね。
そして、リズが新郎に絡んでいる冒険者に一言。
「あのね、意地悪している人ってモテないんだって。リズも、しつこい人は嫌だなあ……」
「「「なっ!」」」
小さい頃からリズを見てきた冒険者達にとって、リズから指摘を受けるのは衝撃的だったみたいだ。
それだけ、リズが成長した証拠でもあった。
しかし、更にリズの意見に追撃している人がいました。
「冒険者といえども、最低限の身だしなみとマナーがなければお金があっても女性は寄り付きませんわ。酒に溺れている人なんて、もってのほかですわ」
「私も、不潔な人は嫌です……」
「「「ななっ!」」」
前日作業の手伝いに来てくれたレシステンシアさんとサキさんも、女性が望む人の姿を熱弁していました。
二人の話を聞いた冒険者達はかなりショックを受けていたけど、逆に女性陣はウンウンと二人の意見に激しく同意してきました。
僕も、常識がなかったり不潔な人はちょっと嫌だなあ。
「浴場に行って体を綺麗にして、身だしなみを整えるだけでも随分違うと思いますよ。明日は多くの人が来ますし、ちゃんとできるところを見せると女性の見る目も変わると思います」
「おお、流石はアレクだ。批判だけでなく、対応方法まで教えてくれるとはな」
「よし、明日に向けて今日は公衆浴場に行くか。ふふふ、馬鹿にした連中よ見ておれ!」
こうして、冒険者は体を綺麗にするために一斉に公衆浴場に向かいました。
まあ、不潔にするよりも全然良いですね。
男性冒険者が公衆浴場に行ったので、冒険者ギルドの人口密度が一気になくなりました。
えーっと、一旦生活魔法で空気を綺麗にしておこう。
シュイン、ぴかー。
よし、これで大丈夫ですね。
「やっぱりアレク君は凄いわね。貴族や官僚って事を抜きにしても、冒険者としても十分成功しているわ」
「あんなむさ苦しい男どもよりも、アレク君の方が余程優良物件よね」
女性冒険者が、冒険者ギルドの入り口を見てせいせいした表情で言っていました。
とはいえ、僕はまだ未成年者なので結婚どうこうとかはないですよ。
すると、ニヤリとしながらリズとエレノアが僕に抱きついてきたのだ。
「にしし、お兄ちゃんは凄いんだよ! でも、お兄ちゃんと結婚するのはリズなんだよ!」
「そうなの、アレクお兄ちゃんは天才なの。エレノアと結婚するから、駄目なんだよ」
「あはは……」
なんというか、リズとエレノアも僕のことは渡さないって感じですね。
昔からこんな感じだし、僕も苦笑するばかりです。
すると、今度は女性冒険者たちがずーんと項垂れちゃいました。
「うん、分かっていた。分かっていたんだよ。アレク君とリズちゃんが小さい頃からラブラブなのもね……」
「正直羨ましい。小さい頃からお互いを思いあっているなんて……」
「「あれ?」」
リズとエレノアも、僕に抱きついたまま落ち込んでいる女性冒険者をポカーンと見つめていました。
あの女性冒険者は、男性冒険者を煽っていたけど実は独身なのだから見せつけている事になっているんだよ。
これには、サンディたちも思わず苦笑していました。
なにはともあれ、前日準備は無事に終了です。
明日は、教会での結婚式と冒険者ギルドの食堂での披露宴の予定です。
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