千百三十八話 僕が神父役?

 翌日、朝から皆を呼び寄せて教会に行って準備をしていると、司祭様がニコリとしながら僕にとんでもない事を言ってきたのです。


「どうせなら、アレク君が神父役をやったらどうじゃ? 小さい頃から教会で奉仕活動をしているし、教会の行事も手伝っている。資格は十分にあるだろう」

「「「おおー!」」」


 リズたちも司祭様の話を聞いて盛り上がっているし、司祭様の後ろに控えているシスターさんがニコニコしながら僕用の聖職者用の服を用意していたのです。

 司祭様、初めから僕に神父役をやってもらう計画でしたね。


「アレク様なら、きっとしっかりと結婚式を取り仕切るはずですわ」

「私も、アレク様なら何も問題ないと思います!」


 そして、何故かレシステンシアさんとサキさんも問題ないと熱弁していたのだ。

 ちびっ子たちもキラキラとした目を僕に向けているし、これを断るのはとても難しそうだ。

 ということで、僕は聖職者の服を着て準備をした。

 あっ、念の為に教皇猊下に確認の連絡をしよう。

 アイテムボックスから通信用魔導具を取り出して、ポチポチと操作して連絡してみました。


「えーっと、『アレク君は教会の名誉司祭だから何も問題ない』って返事が教皇猊下からありました」

「凄いです! アレク様は、教会からも特別視されているのですね」


 通信用魔導具に届いた文面を呟いたら、同じくお手伝いに来てくれたバーグさんがとても感動していました。

 あの、僕が名誉司祭なのを僕もいま初めて知ったのですけど。

 念の為に、新郎新婦にも僕が神父で問題ないか確認する事にしました。


「何も問題ないです。アレク君なら、キチンと神父役をやってくれそうです」

「それに、良く考えたら私たちがアレク君の神父役第一号なのよね。それって、とても素晴らしいことだわ」


 新郎新婦は、僕が神父役になることをとてもポジティブに受け止めていた。

 神父役第一号と聞いてリズとエレノアがいーなーと羨ましそうに言っていたけど、それこそ僕たちの結婚式の時は間違いなく司祭様が神父役ですよ。


「アレク君なら大丈夫よ。こういう時は、多少間違えても自信持ってやれば誰も気づかないわ」


 ティナおばあさまにも、問題ないと言われてしまいました。

 ここは頑張らないとと思い、僕は少し気合いを入れ直します。


「ブーケに、どんなお花を使う?」

「明るいお花が良いわね。ピンクとかオレンジとかがいいわ」


 そして、教会内の準備も始まりました。

 リズは新婦と一緒にブーケを作っているけど、リズももうブーケ作り職人になっているね。

 ちびっ子たちも、着替えをしたり花びらの入ったカゴの用意をしていました。


「じゃあ、冒険者ギルドの様子を見に行ってくるね」

「「「いってらっしゃーい!」」」


 僕はプリンと共に、リズたちとちびっ子たちに見送られながら冒険者ギルドにゲートを繋げて向かいました。

 流石にジンさんたちの時のように大掛かりな装飾はしていなかったけど、それでも冒険者ギルドの半分は綺麗に装飾されていました。

 僕とプリンは冒険者ギルド内を見回していたけど、そこに顔見知りの冒険者が不思議そうな表情をしながらやってきました。


「アレク、なんだその格好は?」

「まるで、教会の司祭様みたいだな」


 冒険者は僕の姿をジロジロと見ていたけど、そういえば今日の僕は聖職者の服を着ていたんですね。


「あの、司祭様に聖職者の服を頂きました。それで、今日は僕が神父役を頑張ります。初めてなので……」

「「「アレク君が神父役!?」」」

「わあっ!」


 すると、今度は何故か受付のお姉さんが僕が話している最中に立ち上がりました。

 いきなりだったので、僕とプリンはかなりビックリしちゃいました。


「う、羨ましい。まさか、アレク君に神父役をするなんて……」

「双翼の天使様に祝福されるなんて、羨ましすぎる……」

「しかも、アレク君の初めての神父役なんてレア過ぎるよ……」


 間違いなく、項垂れている受付のお姉さんたちはまだ未婚の人たちだね。

 だから、結婚式自体を挙げるのも羨ましいのかもしれません。

 受付のお姉さんが色々変な事を言っているけど、きっと気のせいだと思いたいです。

 冒険者ギルド内の準備は問題なさそうなので、僕は再び教会にゲートを繋いで向かいました。

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