千六十話 年の瀬の炊き出し
いよいよ、年の瀬になりました。
今日は、この後辺境伯領恒例の年末の炊き出しを行います。
朝から準備を整えて、みんなで教会に向かいます。
「じゃあ、僕は炊き出しの仕込みをやるから、リズも治療を頑張ってね」
「治療なら、リズにお任せだよ!」
リズは、スラちゃんとともに元気よく手を上げていました。
ミカエルとブリット、それにレイカちゃんの従魔の雲さんもいるから治療の手は十分に足ります。
他の面々で、炊き出しの配膳を行う予定です。
ちなみに、ブライトさんたちは年末年始は実家に戻っていて、エレノアたち王族も王都での年末の行事があります。
なので、今日は僕たちで頑張ります。
「お子様も五歳になられて、ホーエンハイム辺境伯家も益々安泰ですね」
「いえいえ、まだまだ幼いのでこれからですわ」
イザベラ様は町のご婦人とにこやかに話をしていたけど、この世界は危険なことや病気とかもあるから大人になる前に死んじゃうことも多いそうです。
なので、こうして未来の当主が五歳になったことは、町の人にとっても喜ばしいことらしいです。
「「はい、どーぞー」」
当の五歳になった双子ちゃんは、スラちゃんと抱いて治療を張り切っていました。
町の人と積極的に交流するホーエンハイム辺境伯家の方針らしく、二人も頑張って治療していますね。
治療をして褒められるのが嬉しいってのもありそうです。
さてさて、炊き出しの準備もいい感じにできました。
「ソフィアさん、サンディ、イヨ、炊き出しの準備ができました」
「アレク君、ありがとうね」
「「配ります」」
三人だけでなく、他の人も早速配膳を始めました。
因みに年少のちびっ子たちは、アレクサさんとドラちゃんが面倒を見ています。
もはや、ドラちゃんは奉仕活動時のベビーシッターですね。
因みに、年末なのでちょっと豪勢な炊き出しになっています。
「ブルル!」
「あが?! な、何をする!」
もちろんポニさんたちも周囲の警戒をしていて、犯罪者の襟首を噛んで兵のところに引きずっていきます。
臨時で冒険者も警備員として雇っているけど、やっぱり年末は大忙しですね。
もちろん寡婦や孤児なども保護していき、孤児院などで保護していきます。
この辺の手順も確立されているので、順に対応していくだけですね。
ボゥ!
「うお、フライパンから火が出たぞ!」
「いったい、どんな料理を作っているのだろうか?」
因みに、僕は昨年に引き続き、あえて派手に見えるように料理を作っていきます。
といっても、フランベをして肉の臭みを取るだけなんですけどね。
いくら辺境伯領が暖かい地域とはいえ、風邪引きも多いので治療班も大忙しです。
そんな中、こんな依頼が治療班に舞い込んできました。
「どうやら、寝込んでいて治療に来ることができない人がいるそうです。兵が対象者を確認しております」
「あら、それは大変。直ぐに対応しないといけませんわ」
町を巡回していた守備隊員がイザベラ様に報告していたけど、急遽巡回治療班が結成されて動くことになった。
といっても寝込んでいる人を治療できるレベルの治癒士の腕が必要なので、必然的に人選は決まっていった。
「じゃあ、行ってくるね」
「ヒヒーン」
リズがブッチーに跨って騎馬隊と共に出発したけど、念のためプリンがリズの護衛として一緒についていきました。
まあ兵も一緒に行くし、その兵が先行して確認するから大丈夫でしょうね。
僕はというと、どんどんとお肉を焼いていきました。
「うーん、たまには料理しないと勘が鈍るわね」
「ええ、そうね。たまにはやらないとね」
「お願いだから、大惨事を引き起こすのはやめてくれ……」
破壊王のお二人が何やら不穏なことを言っていたけど、ジンさんが全力で引き留めていた。
なんとか二人を治療班の護衛に戻したけど、デス料理を住民に振る舞うのだけはやめて欲しいです。
こうして、なんだかんだあったけど、無事に年末の奉仕活動も終了しました。
巡回治療に行っていたリズも夕方には帰ってきたし、無事に治療を終えて何よりです。
後片付けをして、解散となりました。
「今日は、焼肉ですよ!」
「「「わーい」」」
頑張ったみんなには、ご褒美で美味しい焼肉が振る舞われました。
やっぱり、美味しいご飯は嬉しいよね。
こうして、色々あった一年も終わりを迎えます。
来年はいよいよ学園に通うから、今までとは違った生活になりそうですね。
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