千二十三話 いよいよ入園説明の日

 いよいよ、入園説明会の日になりました。

 各地から王都に、入園が決まった人が集まります。

 殆どの人は保護者同伴なので、今日はアリア様とティナおばあさま、それにナーガ男爵とケイマン男爵もゲートで一緒に来ました。


「アレク様、ブライトとアリサがAクラスに入ることが出来て、親として感無量でございます」

「私からもお礼を言わせて下さい。ヘイリーがAクラスに入れるだなんて、まるで夢のようです」


 ナーガ男爵とケイマン男爵は、僕に深く感謝を言ってきました。

 貴族にとって、Aクラスで入園できることはとても誇りにできることです。

 もちろんこのままAクラスで卒業することが一番ですね。

 そして、今度は初めて会う人が僕に挨拶をしてきました。

 スキンヘッドで、大柄な筋肉ムキムキの男性です。


「アレク様、サザビーズ侯爵と申します。娘のレシステンシアが世話になりました。今後とも、宜しくお願いいたします」


 おお、まさに軍人貴族って感じの人ですね。

 でも、武術だけでなく学問にも力を入れているそうです。

 だからこそ、レシステンシアさんが成績上位に来たんですね。


「この学年は、アレク君を中心に回るのは間違いないわ。それに、リズちゃんとエレノアも、積極的に周りの人に話しかけているわね」

「ええ、そうね。お互いに仲良くなることが一番ですわ」


 ティナおばあさまとアリア様が、入園予定者の座る席を微笑ましく見ていました。

 特にリズとエレノアが、クラス関係なく声をかけています。

 スラちゃんとプリンも、リズの肩に乗って触手をふりふりとしていますね。

 サンディも、サキさんとレシステンシアさんと仲良く話をしています。

 僕もできればそっちに行きたいんだけど、入園予定の人の親が次から次へと僕に挨拶にきます。

 こういうのって、ティナおばあさまとアリア様がいれば十分な気がするよ。

 そんなことを思っていたら、先生が僕に声をかけてきました。

 助かったと思ったら、面倒くさい報告でした。


「アレク様、その、例のEクラスになったガッシュ男爵家のものが、体育館に入れろと大騒ぎをしています。現在複数の教師で対応しておりますが、中々理解してくれません」


 全員の視線が、体育館の入り口に注がれました。

 男性教師に囲まれながらも、ギャーギャー騒いでいる大柄な女性がいますね。

 実はEクラスは僕たちとカリキュラムが違うため、別室で説明を受けることになっています。

 どうも、ガッシュ男爵家の人は別室扱いが気に食わないみたいですね。

 入園予定の人も視線は体育館入り口にくぎ付けで、思わずざわざわとしていますね。

 すると、そのガッシュ男爵家の人がとんでもない行動に出ました。


「いったい、どういうことざますか!」

「お、抑えろ!」

「ぐわあ、止まらないぞ!」


 何と、男性教師を何人も引きずりながら体育館の中に入ってきたのです。

 まるで、タックルをものともしない屈強なラグビー選手ですね。

 あまりにも怖い状態に、女の子を中心に悲鳴が上がっています。

 僕だって、ホラー映画みたいでとっても怖いもん。

 でも、それ以上にこの人たちを怒らせてしまったみたいです。


 ザッ、ザッ。


「ガッシュ男爵夫人、いったいどれだけ騒げばいいのですか?」

「あなたの息子は、補欠合格の身分だと言うことを忘れていませんか?」

「えっ、あっ!」


 おお、あの大柄な女性はやっぱりガッシュ男爵夫人だったんだ。

 超激怒モードのアリア様とティナおばあさまを見て、ようやく進撃が止まりました。

 うん、なんとなく予想がついたけど豪華なドレスに全身宝石だらけで、髪の毛なんてよく分からないセットをしてあります。

 というか、香水の臭いがもの凄くて、ガッシュ男爵夫人から距離があるはずなのに鼻がまがりそうなんですけど……


「直接あなたを呼び出して説明したのに自らやぶるとは、ふふ、いい度胸をしていますわね……」

「これ以上の罰を受けたくなければ、今すぐ別室に向かいなさい。ただし、行ったことは今すぐ陛下に報告しますので」

「はっ、はい!」


 おお、あのガッシュ男爵夫人がすごすごと逃げ帰ったよ。

 僕はアリア様とティナおばあさまの後ろ姿しか見えないけど、二人が殺気を垂れ流しているよ。

 リズとスラちゃんが、思わず抱き合ってガクガクブルブルと震えているよ。

 とにかくトラブルの元はいなくなったし、今のうちに通信用魔導具で今あったことを関係各所に連絡しようっと。

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