第千十五話 お兄ちゃんの仕事風景

 王城に帰って仕事をしながら、さっきあった事を宰相に話していました。


「ははは、既に優秀な人材を捕まえたのか。サザビーズ侯爵家の令嬢といいその平民の剣技特待生といい、中々面白そうな人材だ」

「リズとエレノアは、既にお友達になったと思っているみたいです。仲良く切磋琢磨する分なら、僕も何も言いませんよ」

「お兄ちゃんもこう言うなら、きっと大丈夫だな。それに、私として優秀な人材が将来王城に就職してくれる事を祈ろう」


 宰相も良い人材が現れてニコリとしているけど、現実的にサキさんは王城から指名される可能性が高いんだよね。

 僕、リズ、エレノアはもう仕事が決まっているもんだし、サンディはロンカーク伯爵家当主の仕事もある。

 そうなると、レシステンシアさんとサキさんはほぼ間違いなく成績上位者で元々仕事が決まっていない人になる。

 バーグさんは軍からのスカウトがありそうだし、早めに軍務卿に引き合わせよう。

 そんな事を思っていたら、お昼の時間になりました。


「あれ? エレねーねは?」

「リズねーねもいないよ?」


 食堂に行ったら、リズとエレノアの姿がないことにちびっ子が気がつきました。

 あっ、そうか。

 ちびっ子は、ずっと勉強していたもんね。

 ミカエルたちはお昼前に辺境伯領に帰っているし、多分お昼からはリズたちと冒険者活動を行うだろうね。


「えっとね、リズとエレノアはお友達と会ったから辺境伯領で冒険者活動をしているんだよ」

「「えー! ずるーい!」」


 正直に話したら、ルカちゃんとエドちゃんが文句を言ってきたよ。

 でも、こればっかりは僕の判断ではどうにもできないんだよね。

 そうしたら、この人たちがあっさりと許可を出しました。


「ちょうど午後は何も予定がないから、辺境伯領に行きましょうか」

「エリも、お友達の二人に会いに行きましょうね」

「「「わーい」」」


 王妃様とアリア様がニコリとしながら話をしたので、エリちゃんも混じって大喜びしていました。

 しかも、辺境伯領に行くのは任せてとネコちゃんの毛並みの中にいるマジカルラットが両手を上げていました。

 うん、これはもう止められないですね。

 陛下とともにちょっと苦笑しながら、盛り上がっている面々を見ていました。


「ふう、今日はなんだかいつもよりも静かでした」

「リズとエレノアは元気が余っているからな。サンディのような性格になって欲しかったものよ」


 そして、午後もいつも通りにお仕事をしていたんだけど夕方前になってお仕事を切り上げようとしていました。

 陛下も今日の仕事が終わったらしく、宰相とともにお菓子をモリモリと食べていました。


 シュイン、ぴかー。


「おっ、帰ってきたな」


 すると、辺境伯領に行っていた面々が宰相執務室に戻ってきました。

 陛下もようやくかと思っていたら、何故かサキさんまで着いてきました。


「お兄ちゃん、ただいまー!」

「あのね、サキちゃんにアレクお兄ちゃんの仕事風景を見せてあげたいの」


 リズ、エレノア、言いたいことは分かったけど、肝心のサキさんが固まってしまっているよ。

 しかも、ルカちゃんとエドちゃんがサキさんを陛下の向かいのソファーに連れて行きました。

 仲が良いのは良いけど、誰か説明してあげた方がいいっと思うよ。


「あのね、ルカのおとーさまだよ」

「となりは、さいしょーだよ」

「えっ、ルカちゃんとエドちゃんのお父さんってもしかして。それに、宰相閣下……」


 またもやサキさんが固まってしまったので、ここはお茶を飲んで一息ついてもらいましょう。

 その間に、ここで休んでいた人は連れて行ってもらいます。


「あなた、なんでここにいるんですか?」

「今日は、もう仕事が終わったからだ。さて、部屋に戻るとするか」

「エリも、お風呂に入りましょうね」


 こうして、大人の王族がいなくなると一気に空気が緩んだ。

 そして、今度は宰相執務室の職員がサキさんに話しかけた。


「君が今年の特待生なんだね。うーん、とっても可愛いわ」

「可愛いのに、とっても頭が良いのね」

「性格も良さそうだし、将来一緒に働くのも安心できるわ」


 ローリーさんも一緒になって、サキさんに色々と質問をしていました。

 でも、僕としてはそろそろサキちゃんがオーバーヒートしそうな気がします。

 さて、今日分の書類チェック完了です。


 ドン!


「宰相、確認終わった書類置いておきますよ」

「相変わらず、アレク君は仕事が早いね」


 宰相が、苦笑しながらお菓子を手にして席に戻りました。

 ふう、これで今日のお仕事は完了です。


「はわわ、アレク様はやっぱり凄いです……」

「アレク君は、宰相執務室の主的存在だからね」

「前宰相の時から、アレク君はこんな感じだったよね」

「仕事はできるしとても優しいし、入園前なのにもう熟練の上司って感じだよね」


 そんな僕の事を、職員が色々言ってきました。

 サキさんも、僕の仕事風景を見て妙に納得していました。

 そしてスラちゃんがサキさんを教会の孤児院に送って行ったけど、後日大教会で行われる炊き出しに誘ったようです。

 炊き出しも、良い経験ができるからお勧めなんだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る