千十二話 特待生とぽっちゃり君
こうして中々面白い人材ができたと思ったら、今度は先生が僕に話しかけてきました。
何だろうなと思ったら、ちょうど特待生になった市民の子が来ているので紹介したいそうです。
「アレク様、第六席のサキさんと第九席のバーグさんです」
案内してくれたのは、随分と小柄な濃いピンク色のショートヘアの女の子と、背の高い緑色の短髪の男の子でした。
あっ、あの緑色の短髪の男の子って、試験受付時に熱を出してお父さんに背負われた子だ。
元気になったのもあったけど、こうして特待生として頑張った結果が出たのが何だか嬉しいな。
「アレクサンダーです。どうぞ、アレクって呼んで下さい」
「あっ、あの。私はサキです、よろしくお願いします」
「バーグです。アレク様に治療して貰って、こうして元気になりました。本当にありがとうございます」
サキさんは緊張しながらも勢いよく頭を下げていて、対してバーグさんは少し落ち着きながらも僕にお礼を言ってきました。
サキさんは勉強の特待生で、バーグさんは剣技の特待生です。
他にも二人Aクラスに特待生がいるらしいけど、残念ながら今日は来ていないそうです。
すると、さっそくリズが二人に話しかけました。
「サキちゃん、バーグ君、エリザベスだよ。リズって呼んでね!」
「えっ、は、はい!」
「こ、こちらこそ、宜しくお願いします」
リズが頭にスラちゃんを乗せて、ニコニコしながら二人と握手していました。
目の前に憧れの双翼の天使様が現れて、二人とも思わずドキドキしちゃいました。
更に、エレノアがレシステンシアさんの手を引っ張って一緒にやってきました。
サンディたちも、一緒に続いてきました。
「え、エレノア様、手を引っ張らないで下さいまし」
「ライバルは、仲良くなって初めてライバルなの。挨拶するの」
「わ、分かりましたわ」
うーん、エレノアはどうも好敵手の意味合いを間違ってとらえているのかも。
でも、仲良くしていた方がいいのは間違いないし、レシステンシアさんも一般市民を蔑視することはなさそうです。
まあ、リズの場合は単純にクラスメイトと友達になりたいだけだろうね。
こうして、ワイワイと話をしていたら、急に大声を上げるものが現れました。
「何で、俺がEクラスなんだよ!」
振り返ってみると、例のぽっちゃり君が叫んでいました。
いやいや、僕的には不合格にならなくて良かったと思っているよ。
すると、ぽっちゃり君は何故かレシステンシアさんに向き直って食ってかかりました。
「レシステンシア、これはどういうことだ!」
「はあ、ただ単にフックの成績が悪かっただけでしょう。追試験になったのに、更にカンニングをしたのでしょう?」
「なに!」
レシステンシアさんが心底呆れたような仕草をしているけど、どうやらあのぽっちゃり君と知り合いみたい。
とはいえ、僕もあのぽっちゃり君とは関わりたくないなあ。
確か、ガッシュ男爵家のものだったっけ。
面倒くさそうなことになりそうなので、僕が一歩前に出て話すことにしました。
「フック君、試験結果は再確認まで行って国王陛下の承認を得た正式なものです。もし文句を言いたいのなら、国王陛下に言ってください」
「ぐっ……」
この前閣僚も含めた会議で、試験結果が承認されています。
しかも、追加事項も承認されました。
「そして、今回Eクラスになった貴族へ、補習通知が国王陛下の名前で発送されました。補習を受けない場合の際のことも書かれてあります、直ぐに屋敷に帰って確認した方が良いですよ」
「くっ、くそ! 覚えていろよ!」
あらら、フック君は捨て台詞を吐いて帰っちゃいました。
残念ながら覆ることはない決定だし、入園まで頑張って補習を受けて下さいね。
パチパチパチ。
すると、何故か僕の周りにいる人が拍手を送っていました。
特に、レシステンシアさんや市民の人が凄いって表情をしていました。
うーん、そんなに大したことはしていないんだよなあ。
「アレク様は普段から大人を相手にしているので何気なく対応していますが、あれだけ強く怒鳴る人にきっぱりと言える人は少ないですよ」
先生が苦笑しながら理由を教えてくれたけど、リズだったら普通に注意しそうだけどね。
取り敢えず今日はこれで解散することになり、一ヶ月後の入園説明会でまた会うことになりました。
僕が王城にゲートを繋ぐと、またもや大きな歓声が上がりました。
空間魔法は、やっぱり珍しいみたいですね。
「あらあら、いいライバルができたのね。サザビーズ侯爵家は軍人貴族で、教育もしっかりしているわ」
「特待生も人格的に問題なさそうだし、クラス分けも問題ないわ。Eクラスになったものは、近い内に現実を知るはずよ」
王城に帰って王妃様とアリア様に状況を伝えたけど、特に問題ないと思っているみたいです。
あの問題児も、大変なことになると含み笑いをしていました。
しかも、このままだと僕も巻き込まれそうな雰囲気です。
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