九百八十五話 模擬テスト
学園の入園試験が近づいてくる中、僕は時間が空くとリズたちの勉強を見るようになっていた。
入園試験は主に二つあって、一つが学力試験でもう一つが剣技試験だ。
入園説明会の一ヶ月前に試験があって、そこで入園者が確定する。
基本的に貴族の姉弟は試験に落ちることはないのだが、試験結果がクラス分けに影響してくる。
なので、みんな同じクラスになれるようにと必死で頑張っていた。
今は、過去問を解いてどのくらいの実力があるか確認をしていた。
ちなみに、過去問は普通に町の書店で売られているので一般市民も購入可能だ。
「はい、時間だよ。そこまで」
「「「はふぅ……」」」
リズたちから空気の抜けるような音が聞こえてきたけど、実は王城でみんなで昨年の過去問を解いていたのだ。
力尽きてテーブルの上に倒れ込んだものが何人かいたけど、それだけ頑張ったって証拠だ。
僕の知り合いはみんな受けているのだけど、ブライトさんの従者であるシダーさんとレアさんは侍従を極めると言って学園には通わないそうだ。
回答用紙を回収して、カリカリと採点していきます。
すると、リズがむくれながら僕に文句を言ってきた。
「お兄ちゃんはいいよねー、試験受けないからねー」
「官僚試験に合格しているのもあるけど、問題作成側だからね。流石に試験は受けられないよ」
「お兄ちゃんは、試験受けなくていいよねー」
リズが机を指先でいじいじしながら恨めしそうな目で僕のことを見ているけど、僕だって問題を作るために数年分の過去問をやっていたんだからね。
既にそのことは言っているはずなのに、試験疲れのリズには関係ないらしい。
他の面々も、いじいじしているリズを苦笑しながら見ていた。
さて、採点も終わりです。
「おめでとう、サンディとメアリは満点だね。スラちゃんも満点だ。リズとエレノアは、ひっかけ問題を間違っているよ。プリンもだね」
「「ありがとうございます!」」
「「ぐぬぬぬ……」」
何故かスラちゃんとプリンも過去問を解いていたけど、そもそもスラちゃんは僕よりも官僚試験の点数が良かったはずだよ。
満点を逃した二人と一匹は相当悔しがっているけど、本番で頑張れば十分挽回できるはずだよ。
「ブライトさんとヘイリーさん、アリサさんも十分にいい点数です。この調子で頑張れば、十分Aクラスに入れそうですね」
「「「ありがとうございます」」」
三人とも一生懸命勉強を頑張ったので、着実に学力が上がっていました。
これなら、油断しなければ本番は大丈夫ですね。
どこを間違えたかを教えつつ、今日の勉強は終わりです。
「午前中は学力試験で、昼食を食べてから剣技の試験になるよ」
「じゃあ、リズの本気は午後からなんだね!」
リズよ、学力試験も全力で頑張りなさい。
まあ、この中では圧倒的に剣技の実力があるから、一位抜けの第一候補だろうね。
「試験は一ヶ月後で、剣技もあるから動きやすい服装もした方がいいよ。もしくは、マジックバッグに入れるとかだね。残念ながら、エレノアは王族としての威厳を出さないといけないから試験はドレス着用義務ね」
「えー! アレクお兄ちゃん本当なの!?」
そりゃ、王女様が楽な服装で試験を受けるわけにはいかないでしょう。
エレノアは、再びがっくりとしてしまった。
まあ、リズたちにもそれなりの服装はさせるけどね。
「お兄ちゃんは、試験当日はどうするの?」
「試験監督官をやることになったよ。スラちゃんとプリンと一緒に、カンニングしている人がいないか見張るんだ」
「スラちゃんから逃れてカンニングする人なんていないの……」
これも既に決まっていて、二匹には伝えていた。
体育館で一斉に学力試験を受けるらしいのだけど、毎年カンニングするものが現れるという。
特に、学力が足りない貴族がそういうことをするという。
なので、スラちゃんとプリンは張り切って会場内を巡回するそうです。
しかもエレノアが生まれた関係で同級生が多いらしく、特に下級貴族の子どもが多いので要注意です。
色々と考えても仕方ないので、まずは昼食を食べて元気をつけましょう。
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