九百三十八話 年末の後片付け
年末も近くなってきたので、王城内の各部署では大掃除が始まりました。
使わなくなったものを捨てたり、新たな備品発注をしたりします。
殆どの人は普段から不要なものを捨てたりしているので、机を拭いたりするだけで済みます。
「ほらほら、ドンドンとマジックバッグに入れていくのよ」
「こんなに取っておいても仕方ないでしょう。お父様は、昔から変わらないですわ」
「はい……」
宰相だけは、シーラさんとレイナさんに怒られながら孫からのプレゼントを僕が作ってあげたマジックバッグに入れていました。
気持ちは分かるけど、机の中いっぱいにあるのはどうかと思うよ。
常に書類整理をしているから、いらない書類が何も無いのはありがたいです。
机の整理が終わったら、色々なところを綺麗にしていきます。
「こんなところにも、埃が溜まっていたんですね」
「一年経つと、結構汚れますね」
ローリーさんも、他の職員とともに色々なところを掃除していました。
若干、服も大きなお胸の辺りが汚れています。
胸が大きい人は、こういう苦労もあるんですね。
スラちゃんとプリンも、雑巾やハタキを持って色々なところを掃除しています。
リズたちも机などを掃除していますが、エレノアたち王族の姿はありません。
というのも、自分たちの部屋を綺麗にするのが優先だからです。
きっと、色々なものを部屋の中に置いているんでしょうね。
こうして、仕事をしつつ色々なところを掃除しました。
「ふふ、二人は勉強部屋のオモチャを片付け終わったかしら?」
「「さっ」」
昼食時、王妃様がルカちゃんとエドちゃんに片付けの進捗を聞いたけど、二人は一斉に首を背けてしまった。
これは、オモチャを片付けながらいつの間にか遊んじゃったのですね。
仕方ないって感じでスラちゃんが手伝うと触手を上げたら、王妃様が大丈夫と言っていた。
「ふふ、ちゃんとお片付けできなければオヤツがないだけだからね」
「「えー!」」
そんなーって二人は絶望感漂う表情になったけど、王妃様の笑顔が崩れることはありません。
こればっかりは仕方ないですね。
そして、王妃様の目は本命を冷たく射抜いていました。
「ふふふ、それで、あなたは執務室のお片付け終わったかしら? 確か、自分の机だけ綺麗にすれば良いはずですよね?」
「ぎくー!」
あーあ、一番偉い人が何もしていなかったんだ。
執務室内はお付きの人が掃除するから大丈夫だけど、肝心の自分の机がごちゃごちゃだったんだね。
流石に重要書類があるから他人は下手に手出しできないし、ここは陛下自身の手でやってもらうしかないですね。
「悪いけど、リズちゃんとスラちゃんは陛下のお手伝いをしてくれるかしら? サンディとイヨは、ルカちゃんとエドちゃんを見てあげてね」
「「「はい!」」」
おお、またもや王妃様が笑顔で三人と一匹にお願いをしたけど、迫力満点の微笑みだなあ。
リズたちは、思わず敬礼ポーズをしていたよ。
僕は自分の仕事があるので、お手伝い免除です。
ちなみに、ちびっ子二人にはアリア様も付くそうです。
こうして、午後のお仕事が始まりました。
「はあ、随分と綺麗になったのう」
「当たり前です! あんなに溜め込んでいて」
ようやく宰相の机も綺麗になったけど、シーラさんも呆れるほどでした。
孫からのプレゼントは宝物なので、マジックバッグは大事に屋敷に持ち帰るそうです。
これで、宰相執務室のお掃除は終わり、必要な備品の発注も終わりました。
そして、気になるのがナッシュさんの隣に空の机と椅子が置かれているんですけど。
「ああ、年明けに官僚試験に合格した者が配置される。単純にアレク君の仕事量は、ナッシュとスタンリーだけではやりきれないんだ。私の仕事も、一部回す予定だ」
あの、そんな大事な事をついでのように言わないでください。
あと、僕の仕事ってそんな特殊なことはしていませんよ。
他の人も、うんうんと宰相の言葉に同意しないで下さいよ。
僕は、とほほと思いながら午後の仕事を進めていました。
しかし、夕方になるとちょっと異変が起きました。
ルカちゃんとエドちゃんの片付けのお手伝いをしていたサンディとイヨは帰ってきたのだけど、未だにリズとスラちゃんが帰ってきません。
もう帰る時間なので、流石に僕も心配です。
すると、かなりクタクタの一人と一匹が姿を現しました。
「お片付け、終わらなかった……」
「「「えっ!」」」
リズの絶望的な言葉に、全員びっくりしちゃいました。
どうも開かずの引き出しを開けるように王妃様から命令され、開けた瞬間引き出しが壊れるほどのものが入っていたそうです。
リズとスラちゃんは完全にとばっちりを食った形になったけど、封印されし引き出しから出てきたものを片付けていたそうです。
時間になったので一人と一匹は上がったみたいだけど、陛下は未だに王妃様の監視下で片付けをしているそうです。
うん、今晩の夕食は少し豪勢にしてあげよう。
そして、結局陛下の片付けは直ぐに終わらなかったようで、一旦マジックバッグにしまってから後日片付けをすることになりました。
さらに、滅茶苦茶怒られている父親を見て、ルカちゃんとエドちゃんは今度はちゃんとお片付けしようと子どもながらに思ったそうです。
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