九百三十三話 結婚式で馬鹿なことをした者の末路

 スラちゃんの描いた絵もバッチリと仕上がったので、これで準備完了です。

 僕は披露宴の準備があるので、屋敷に残ります。


「リズ、準備は大丈夫?」

「バッチリだよ、任せて!」


 教会には僕とプリン以外のメンバーが行くけど、リズは教会内で司会をするそうです。

 何にせよ、ルーカスお兄様とアイビー様、それにカレン様もいるから何かあっても大丈夫ですね。


「ふふ、みんなもやる気満々ですわね」

「「「がんばるー!」」」


 当のカレン様は、フラワーボーイとフラワーガールをやるミカエルたちを愛でていました。

 一歳組の三人も、綺麗な衣装を着ていますね。

 ネコちゃんも一緒に参加するらしいけど、あくまでもボディーガードに徹するつもりです。

 マジカルラット軍団も傍に控えているけど、マジカルクラウドのクモさんはリズの側にいて補助をするそうです。

 このメンツだけでもゴブリン千体いても余裕なレベルなので、問題はないでしょう。

 では、さっそく来賓は教会に移動します。


「教会までゲートを繋ぐので、皆さまご移動をお願いします」


 実は、屋敷から教会までは距離があるので、本当なら馬車で何回も往復をしないとならない。

 しかし、ゲートなら安全かつ一度に移動できます。

 来賓の数が少ないとはいえ、貴族が多いので安全第一です。

 既に、ポッキーとルシアさんが先乗りして準備しています。

 来賓とサポートメンバーは、次々とゲートをくぐって教会に向かって行きました。

 ゲートを閉じたところで、僕は披露宴の台本の準備に取り掛かります。


「えーっと、これとこれを入れてっと」


 実は、今回の結婚式にはある特殊な理由がありました。

 なので、紹介の際にはそのことを絶対に入れないと。

 紙に簡単に話す内容を書いていきながら、この前のエマさんとオリビアさんの結婚式を思い出しました。


「直前に司会をすると言われなければ、もう少しちゃんとした内容で話せたのにな」


 思わず苦笑しながらも、大体の内容を書き終えました。

 披露宴会場も準備が出来て、良い感じですね。

 そして、結婚式が始まっているんじゃないかなってタイミングで、通信用魔導具にカミラさんからの連絡が入りました。


「えーっと、何々? えっ、結婚式に乱入者があった?」


 何だか、とんでもない内容が書いてあるんですけど。

 流石に結婚式がぶち壊しになるのは困るので、僕は準備をしている使用人に話をしてから急いで教会に向かった。

 すると、教会の外でボコボコにされて気絶している男性と、怒り心頭のレイナさんとカミラさんの姿があった。

 おや?

 この男性は、確か結婚する新婦にしつこい恋心を抱いていた人では。


「こいつ、新郎新婦が祭壇の前で誓いの口づけをする寸前で教会の中に入ってきたのよ。タイミングを狙っていたみたいで、警備の手を振り切っていたわ」

「『彼女と結婚するのは僕だ!』って言いながら、祭壇の前に走っていったのよ。でも、新婦の『あなたなんて大嫌い』コールで膝から崩れ落ち、素早く動いたネコちゃんによってボコボコにされたのよ。ネコちゃんがボコボコにしなければ、来賓の女性陣がこいつをボコボコにしていたはずよ」


 うん、まるで映画みたいなシチュエーションだったけど、全て失敗に終わったみたいですね。

 ここは、ネコちゃんナイスと言っておきましょう。

 内務卿に連絡したら、再婚などの手続きが出されている案件を壊そうとしたので、問答無用で王城の軍の詰め所に運んで良いと結論付けた。

 なので、軍務卿に連絡して王城にゲートを繋いでボコボコにされた男性を兵に運んで貰った。

 人の恋路を邪魔して、飛天虎にボコボコにされて、兵にドナドナされるなんて。

 本人はヒーロー気分だったのかもしれないけど、貴族同士の婚姻を壊そうとしたのだから彼には厳罰が待っていますね。

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