八百八十七話 子どもたちが張り切って治療をします

「お待たせ」

「セオちゃんは、お腹いっぱいになってすやすやと寝ちゃったわ」


 食堂に、ルルーさんとクラヴィーアさんが入ってきました。

 更に、エリちゃんを抱っこしたティナおばあさまもいます。

 エマさんとオリビアさんの姿もありますね。

 ちょうどみんなもプリンを食べ終えたので、席を立ちました。


「じゃあ、行ってきます」

「「「行ってきまーす!」」」

「気を付けて行ってくるのよ」


 ティナおばあさまはエリちゃんの面倒をみるので、僕の屋敷に残ります。

 今日はレイカちゃん達と辺境伯家の双子ちゃんも参加するけど、ジンさん達は用事があって参加できないので代わりにルシアさんが一緒に行きます。


「グルル!」


 みんなで外に出ると、意気揚々とドラちゃんもついてきました。

 今日はドラちゃんが役に立つ場面は少ないと思うけど、屋敷にいてと無下に断るのも忍びないです。

 そのまま冒険者ギルドに移動して手続きを済ませたら、僕たちは教会に向かいました。


「「「おはよーございます」」」

「うむ、おはよう。今日はよろしく頼むぞ」


 安息日の礼拝の準備を終えた司祭様に挨拶をして、僕たちは教会脇にある治療施設に入りました。

 今日の仕事は、治療施設に入院している人の治療と荷物運びです。

 ここからは回復魔法が使える人と使えない人に別れて、それぞれの仕事をします。

 クラヴィーアさんは回復魔法が使える方に、ルルーさんとルシアさん、それにエマさんとオリビアさんは回復魔法が使えない方の面倒をみます。

 更に、ちびっ子軍団も回復魔法が使えるか使えないかで分かれます。


「雲さん、頑張ろうね」


 レイカちゃんの側で、綿あめみたいなマジカルクラウドの雲さんがニコリとしていました。

 魔法生物に近いので、雲さんは回復魔法が使えます。

 ではでは、早速作業を始めましょう。


 シュイーン、ぴかー!


「どうかな? 痛いの治った?」

「こりゃ凄いな。膝の痛みが全くなくなったぞ!」


 治療といえばということで、リズとスラちゃんはかなり張り切っています。

 ミカエルとブリット、それにルカちゃんとエドちゃんも普段の炊き出し時に無料治療をしているので、治療はお手の物です。

 僕も治療をしつつ、みんなの様子をみています。


 シュイーン、ぴかー!


「元気になった?」

「元気になったよ。凄い雲さんだね」

「えへへ!」


 レイカちゃんと雲さんのペアも、良い感じに治療できています。

 パートナーを褒められて、レイカちゃんもご機嫌ですね。

 ここは大丈夫そうなので、僕は荷運びの方に向かいました。

 すると、中々面白い光景が。


「キュー!」

「グルル」

「おお、何とネズミがドラゴンを使役しているぞ」

「あれって、アレク君のところにいるドラゴンだよな。たまに空を飛んでいるぞ」


 ドラちゃんの頭の上に乗ったポッキーが、ドラちゃんにあれこれ指示をして荷物を運ばせています。

 礼拝を終えた町の人も、二匹の不思議な関係を微笑ましく見ていました。

 エマさんとオリビアさんの従魔のクリームとクッキーも、空間魔法の練習で荷物をアイテムボックスにしまっています。

 お掃除をしている面々も順調で、早いうちに全部終わりそうですね。


「「「終わったよ!」」」

「おお、これは凄いのう。こんなにも早く終わるとは」


 礼拝が終わって顔を見せてきた司祭様のところに、ちょうど入院患者の治療を終えた面々が戻ってきた。

 やっぱり治療の手が多いと、あっという間に終わっちゃうね。

 特に初めて治療を手伝ったレイカちゃんは、とっても満足そうな表情を見せていた。

 荷運び班も終わったみたいなんだけど、まだこっちに来れない事情があった。


「まてー!」

「追いかけるぞー!」

「ガウッ!」


 教会の礼拝に来ていた子どもと、仕事を終えたドラちゃんが追いかけっこをしていました。

 ドラちゃんも鍛えられた効果が出ていて、最近は中々良い感じに走れるようになりました。

 子どもたちも、ドラゴンを恐れずにはしゃいでいます。


「「「行くよー!」」」

「グルル!」

「もう少し、待ってあげましょう。とても楽しそうね」

「ふふ、そうですわね。子どもたちも良い笑顔ですね」


 更にミカエル達もドラちゃんを追いかける子どもに混じって、追いかけっこを始めました。

 そんな楽しそうな子どもたちを、エマさんとオリビアさんが目を細めて見ていました。

 因みに、小さな子が頑張っていると沢山のお菓子を頂いちゃいました。

 おやつの時間に、みんなで美味しく頂きました。

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