八百七十九話 ピエロがした選択

 久々に見たピエロは髪の毛が薄くなったりとますますおっさん化が進んでいて、パッと見はなんでこの人が極悪非道の闇ギルドを率いていたのか良く分からなかった。

 しかし、ピエロは僕たちが姿を現すと物凄い勢いで僕たちを罵倒し始めた。


「てめー! お前らのせいで、俺が捕まっちまったじゃねーか! 俺の計画は、全てパーだ。このクソ野郎が!」


 鉄格子を握りしめてギャーギャー騒いでいるけど、やっぱり小物感しか感じられない。

 ピエロの仮面を付けないと、ピエロはピエロの人格になれないんだ。

 ギャーギャー騒ぐピエロを見て、僕だけでなくジンさんたちも大きな溜息をついています。

 相手にするのも面倒くさそうなので、さっさと本題に入りましょう。

 この後の説明はてっきり聖騎士が行うかと思ったら、教皇猊下自ら行うことになりました。


「囚人ピエロ、これより特別尋問を行う」

「特別尋問? 何をする気だ?」

「お前は、拘束されたまま椅子に座っていればよい。ただ、目の前で料理を作るのを眺めていれば良い」

「???」


 ピエロは教皇猊下が言ったことが全く理解できていないけど、実際に体験すれば分かるということになりました。

 聖騎士が複数牢屋の中に入ってピエロを拘束し、さっそく聴取の為の部屋に移動します。

 ピエロは尋問に慣れたのか、かなり大人しくしています。


「なんだこりゃ? 本当に目の前で料理をするだけか?」

「言っただろう。目の前で料理をするのが、今日の特別尋問だと」

「ははは! 死ぬ前に料理を振る舞ってくれるのか。こりゃ傑作だ!」


 ピエロが愉快そうな表情で大笑いしているけど、これから地獄を見るんだろうなあ。

 ということで、さっそく料理の準備をすることになりました。

 しかし、ここでちょっとしたトラブルが。

 何と、料理用のテーブルが三つ用意されています。


「あの、これは誰用のテーブルになりますか?」

「破壊王様と、双翼の天使様、それに救国の勇者様の分と聞いております」

「「えっ!」」


 あの、なんで僕とジンさんも料理することになっているんですか?

 予想外の展開に、僕とジンさんはぽかーんとしちゃいました。

 何気に、レイナさんとカミラさんの二つ名が破壊王で定着しています。

 この前のテストの際に、破壊王の名に相応しい破壊っぷりを披露したもんなあ。

 一方、料理をしなくて済みそうなスラちゃんとプリンは、滅茶苦茶ホッとしているのが見て分かった。

 そして、この人も自信満々で僕たちに指を向けていました。


 ビシッ。


「ジンとアレク君が相手なのね。相手にとって不足はないわ」

「良い勝負の相手が出来たわね。腕が鳴るわ」


 レイナさんとカミラさんまで、僕とジンさんをライバル視していた。

 二人とも、不敵な笑みを浮かべています。

 こうなると、料理を避けるのは難しそうです。

 僕とジンさんは、深い溜息をつきながらそれぞれのテーブルにつきました。

 そして、教皇猊下がピエロに禁断の質問をしました。


「さて囚人ピエロよ、誰の料理を食べたいか?」

「そんなもの、女の料理に決まってるだろうが。むさ苦しい男や、ガキの料理なんて食べたくないわ」


 あーあ、言っちゃった。

 この瞬間、ピエロが地獄を見ることが決定しちゃった。

 そして、レイナさんとカミラさんは料理をリクエストをされたので、早くももの凄くやる気になっちゃった。

 個人的には、ピエロが死刑執行前に死なないかとっても不安です。

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