八百五十七話 張り込み捜査?

 夜になって、僕たちは再びオカマさんのお店に集まりました。

 予定通り奥の席に座って、みんなで店内を眺めています。

 お客さんも沢山入っていて、相変わらず繁盛していますね。

 しかも、女性客が凄く多いような気がします。


「うーん、この鶏肉をトマトで煮込んだのがとっても美味しいよ!」

「ピザっていう料理も、とても美味しいわね。チーズや様々な具材をいっぺんに食べられるわ」

「お前ら、普通に楽しんでいるなあ……」


 リズとレイナさんは、出てきた料理を次々と平らげていきます。

 ジンさんは思わず呆れているけど、確かにどの料理もとても美味しいです。

 この地域はトマトが名産なので、パスタにしてもサラダにしても色々な料理にトマトが使われています。

 僕もトマトが好きなので、出された料理を次々と食べていきました。


「すみません、ステーキおかわりお願いします」

「畏まりました、少々お待ち下さいませ」


 ティナおばあさまも、普通に追加注文を頼んでいます。

 トマトソースをかけたステーキがとっても美味しいので、お肉だけ追加注文していますね。

 スラちゃんとプリンも、もりもりと料理を頼んでいます。

 目的の人物が現れなくても、これだけで僕たちは大満足です。

 でも、キチンとお仕事をしていますよ。


「今の所、問題のありそうな奴は現れていないな」

「そうね。今の所、ね」


 店内にいる人や出入りする人を監視しているけど、夜の部営業開始から怪しいものは現れていません。

 ジンさんもレイナさんも、お肉を頬張りながら時々周囲に視線を向けています。

 すると、追加注文を持ってきたオカマさんさんも、さり気なく僕たちに話しかけてきました。


「怪しい奴は、いつも閉店間際に来る事が多いわ。もう少し、気長に待ちましょう」

「そうね、焦って事を仕損じては駄目ね」


 ティナおばあさまも、焦らず待ちましょうと言っています。

 そして、オカマさんに一言。


「お肉のおかわり、頂けるかしら?」

「あらあ、ティナ様のお目にかかったのかしら」

「ええ、固すぎずちょうど良い焼き具合だわ」


 ティナおばあさま、どのくらいお肉が気に入ったのですか?

 おかわり二回目を、オカマさんにニコリとしながら頼んでいました。

 ちゃっかり、スラちゃんもおかわりとアピールしています。

 こうしてみんなでお喋りしながら、閉店時間間際になった時でした。

 一斉に、全員の緊張が高まりました。


「あいつで間違いなさそうだな」

「ええ、そうね。鑑定不要ね」


 レジに現れた、黒い服を着こんだ男に全員の警戒が向きました。

 ティナおばあさまが鑑定不要と言っているけど、僕は念のために鑑定を使って確認をしました。


「間違いなく、闇ギルドの構成員ですね」

「スラちゃんも間違いないって言っているよ」

「だろうな。こんな時間に黒ずくめの服を着て、異様に周囲を警戒しているぞ」


 ここまで分かれば、後は動くのみです。

 ステーキの一切れを食べ終えたスラちゃんが、僕たちのいた席から男のところに静かに近づきました。

 そして、何かを受け取って店を出る男の後を、音もなく尾行し始めました。

 後は、結果を待つばかりですね。

 すると、飲み物を持ってきたオカマさんが、僕たちにさり気なく話しました。


「ふふ、流石だわ。奴が、いつもお店に来るのよ。まあ、下っ端の中の下っ端ね」

「でも、尾行するには十分だわ。ふふ、この後の展開が楽しみだわ」

「ええ、そうね。私も久々においたしちゃおうかしら?」


 えーっと、オカマさんとティナおばあさまが不敵な笑みを浮かべながらとっても盛り上がってるけど、僕とジンさんは思わず震えあがっちゃった。

 そして、話の流れからすると、オカマさんも作戦に参加するつもりみたいだよ。

 まあ、オカマさん程の実力者が参加するのなら、戦力的には何も問題ないけどね。

 こうして僕たちは、スラちゃんが帰ってくるのを待ちながら、お店が閉店になるまで料理を楽しんでいました。

 幾つかの料理は、テイクアウトを頼んでアイテムボックスにしまいました。

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