八百十六話 午後も頑張ります

 午後も炊き出しと治療をしつつ、物資の配布を行います。

 リズ達治療班に加えてエマさんオリビアさん達の炊き出し班も順調に動いていて、今のところ大きな混乱は見られません。

 物資については、町中はサギー男爵領の守備隊と協力しながら配布する事ができます。

 そして郊外や農村への物資の輸送については、バザール領の復興作業と同じ方法を取ることになりました。


「では、行ってくるわ。上手くいくだろうって、既に連絡が入ったわ」

「私も同行しようぞ。冒険者に面倒な事をお願いしなくてはならないのでな」


 それは、サギー伯爵領にいるサギー男爵領出身の冒険者に郊外の荷物の輸送を依頼する方法です。

 既にサギー伯爵が冒険者ギルドに打診をしていて、協力すると返答があったそうです。

 ポッキーのゲートを使って、ティナおばあさまと先々代夫人はサギー伯爵家の屋敷に向かいました。

 そして、この子達はお役御免になりました。


「「「うみゅ……」」」

「みんなお昼寝の時間ね。ひとまず、王城に行きましょうね」

「「「うん……」」」


 ミカエルとブリットはまだ大丈夫だけど、他のちびっ子軍団の目は既にとろんとしています。

 僕は王城にゲートを繋いで、ルシアさんに引率してもらいながらちびっ子軍団を送り届けました。

 ミカエルとブリットは、リズと一緒に治療班です。

 レイナさんとカミラさん、それにルリアンさんとナンシーさんには、更に別の事をしてもらいます。


 ちょいちょい。


「おっ、あいつだね」

「では、さっさと捕まえますか。意外なところから、闇ギルドの構成員が見つかるかもよ」


 それは手の空いたスラちゃんとプリンと共に、不審者を徹底的に捕まえる事です。

 サギー男爵と結託していた者もいるだろうし、闇ギルドの構成員も僕達を監視しているかもしれません。

 ジンさんも、もう少ししたらレイナさん達に加わるそうです。

 そして、辺境伯様とニース侯爵は今日一日僕と一緒に調整をしてくれます。

 王城で多くの調整がついているので、支援体制をどうするかがポイントとなっています。


「そういえば、サギー男爵領の名産って何でしょうか? バザール子爵領の時は農業生産も回復して特産のソースも売り出せたけど、何か良いものがあれば良いですね」

「サギー伯爵領から男爵領にかけて、香辛料が沢山採れるぞ。どうもサギー男爵は食い物じゃないからと、あまり奨励はしなかったみたいじゃがな」


 ニース侯爵がこの辺りの名産を教えてくれたけど、香辛料か採れるなら十分に名産になりそうな気がする。

 元々サギー男爵は目の前の金品に目がくらみ、統治者として大事なことを全然やってこなかったんだ。

 どうも王都のサギー男爵家の屋敷にも大した物は残ってないらしく、屋敷に残された使用人も保護されているそうです。

 そうこうしているうちに、ティナおばあさまから連絡が入りました。


「えーっと、『冒険者を送るから、荷物を屋敷の庭に出しておいて』だそうです。じゃあ、僕は庭に行ってきます」

「アレク君、気を付けてね」


 僕は辺境伯様とニース侯爵に見送られながら、応接室から庭に移動します。

 各地に行くための荷馬車が準備してあり、僕はアイテムボックスから荷馬車の荷台に荷物を乗せていきます。


 シュッ。


「アレク君、待たせたわね。冒険者を連れてきたわ」

「おお、なんじゃこりゃ! こんなに酷い状況になっているのかよ」

「こりゃヤバいぞ。直ぐに動かないと」


 三台分の荷馬車の準備を終えたタイミングで、ポッキーの長距離転移でティナおばあさまと十人ほどの冒険者が屋敷の庭に現れました。

 冒険者は炊き出しと治療に並んでいる人の列を見て、相当驚いていました。

 まさか生まれたところが、ここまで酷いことになっているとは思わなかったみたいです。


「ここは俺等に任せておけ。地元の事は地元の人間が一番良く知っているぞ」

「直ぐに荷物を運んでやるぞ。こうしちゃいられねーぞ!」


 冒険者達はすぐさま荷馬車に乗り、三つのグループに分かれてあっという間に出発しました。

 ここまでくれば、取り敢えず一安心ですね。

 すると、今度は街を巡回していたジンさんが僕のところに駆け寄ってきました。

 そして、僕とティナおばあさまに耳打ちをしました。


「未確認だけど、さっき捕まえた奴が闇ギルドの構成員だった。スラちゃん経由で王城に送って尋問しているけど、何かしらの情報を持っているかもしれない」


 僕とティナおばあさまは、お互いに顔を見合わせてからジンさんにコクリと頷きました。

 本当に町中の不審者から、闇ギルドに繋がる情報が出てくるかもしれないよ。

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