八百十一話 サギー男爵領に到着
馬車に限りがあるので、僕たちは辺境伯領から呼び寄せたポニさん達に乗ることにしました。
「ブッチー、悪い人を残らず倒しちゃおう!」
「ヒヒーン」
ブッチーに乗ったリズとスラちゃんは相当張り切っていたけど、個人的にはやりすぎないかとても不安です。
因みにティナおばあさまと辺境伯様が自ら馬に乗るのは予想できたけど、フルプレートアーマーに身を包んだ先々代夫人も自ら馬に乗っていた。
先々代夫人が暴走しないかとっても不安なので、ブレーキをかける意味合いも含めてプリンに一緒にいてもらう事にしました。
ということで、サギー男爵領に向けていざ出発です。
通常の馬車便を使うと、サギー伯爵領からサギー男爵領へは一時間かかるそうです。
軍馬とポニさんたちなら、余裕で一時間かからずにサギー男爵領に到着するでしょう。
ここで、先々代夫人がキラリと剣を抜いて高々と宣言した。
「これより王国に巣食う悪しき者を駆逐する。皆のもの、我に付いてくるがよい!」
「「「うおー!」」」
何だろうか、先々代夫人は凄い迫力とカリスマ性を持っているなあ。
国軍とホーエンハイム辺境伯軍、それにサギー伯爵軍の混成構成なのに、全員が先々代夫人と共に気合の雄叫びを上げていた。
指揮官は僕じゃなくて先々代夫人が務めた方がいいんじゃないかなと思ったが、やっぱりそうはいかなかった。
「では、アレクサンダー副宰相。出陣の合図を」
先々代夫人は、僕に頷きながら話しかけてきた。
ティナおばあさまと辺境伯様の方を向いても、頷くだけだった。
もちろん、リズ達も同様です。
僕は馬上のまま、声を上げました。
「では、作戦を開始します。目的はサギー男爵とその一味の捕縛です。無抵抗な人に狼藉は働かないように」
「「「はい」」」
「サギー伯爵領に残る部隊も警戒を怠らないように。全軍、進撃開始!」
「「「うおおお!」」」
僕の合図で、総勢二百人を超える混成軍が動き始めました。
指揮官の僕は部隊の最後方についていて、リズ達も僕の周囲についています。
若干先々代夫人が飛ばし気味だけど、元気いっぱいだという証拠だと思いたいです。
そして、出発してから全然一時間かからずにサギー男爵領に到着しました。
僕はサギー男爵領の守備隊に、通信魔導具に映し出された命令書を見せました。
「王国副宰相、アレクサンダーです。国からの命により、これよりサギー男爵家への強制捜査を行います」
「副宰相閣下の御前である。速やかに通すのだ!」
「ふ、副宰相閣下? あっ、サギー伯爵家の先々代夫人まで!」
うん、僕が命令書を突きつけるよりも、フルプレートアーマーを着た先々代夫人の迫力の方が効果抜群だった。
一部の兵を逃走防止対策として防壁の門に残しつつ、僕たちはサギー男爵家の屋敷に向かって進み始めました。
すると、町中の人々の様子が明らかにおかしかった。
「こ、これは酷い。野良犬とかがかっぽしているし、衛生状態も良くないよ」
「お兄ちゃん、何だか痩せている人が多いよ。みんな、お腹空いているのかも」
「市場も品物が無くて、活気がないの」
リズやエレノアだけでなく、他の人も街の酷さにビックリして言葉を失っていた。
人々の目に生気がなく、かなり痩せ細っていた。
ここまで酷い街の状況なんて、当時のバザール伯爵領に進軍して見た時以来です。
「ぐっ、何たることか。民が飢えているではないか。あのたぬきは、一体何をしてるのだ!」
「ここまで酷い統治状況を見るのは、本当に久々だわ。市中に食べ物がまわってないわね」
「貴族以前に、人として見過ごせない。こんな事が許されてたまるものか」
あまりの街の惨状に、先々代夫人だけでなくティナおばあさまと辺境伯様も顔をしかめていた。
あまり考えたくないけど、バザール伯爵家みたいに飢餓輸出をしている可能性もある。
とにかくサギー男爵を捕まえないと。
兵も含めて、皆の気持ちが一つになった瞬間だった。
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