七百九十八話 みんなで薬草採取をします

 そして、獲物を倒せばいつもの講座が待っています。

 おばちゃんとスラちゃんが、倒したウルフとイノシシに近づいていきました。


「ほら、新人はこっちにきな。血抜きのやり方を教えるよ」

「血抜き終わったら、リズが薬草採取のやり方を教えるよ」

「「「「は、はい!」」」」


 おばちゃんの血抜き講座はスパルタだから、新人冒険者には大変かも。

 ついでというので、ちびっこ軍団も一緒に見学しています。

 こういうのは、覚えていて損はないよね。

 その後は、リズによる薬草採取講座です。

 リズはとても丁寧に教える方だから、新人冒険者からも評価が良いんだよね。


「えっと、みつけた!」

「これが薬草なんだ」

「キュー」


 ちびっこ軍団も、マジカルラットに教えて貰いながら薬草を採っていきます。

 良い感じに採っているみたいですね。

 ポニさんも周囲を警戒しながら、のんびりと草を食べています。

 そして、森でちびっこ軍団の匂いがしたらこの存在も姿を現します。


 ガサガサ、ガサガサ。


「ガオー!」

「うわっ、く、クマだ!」

「で、デカい。デカいぞ」


 森の中から巨大なクマが姿を現し、新人冒険者は思わず尻もちをついてしまいました。

 でも、僕たちもポニさん達も特に動いていません。


「あー、クマちゃんだ!」

「クマちゃん!」

「レイカ、冒険者になったよ!」

「ガウッ!」


 あのクマはちびっこ達の友達なので、一目散にクマに向かって走っていきました。

 意気揚々と冒険者カードを見せるちびっこ達の頭を、クマが優しく撫でていました。

 そして、クマと一緒に薬草採取を再開しました。


「な、何だあれは。子ども達とクマが仲良く薬草採取をしているぞ」

「い、一体どうなっているんだ?」

「あー、あれは気にしなくて良いぞ。目の前の薬草採取に集中しろ」


 ジンさんが驚愕の表情のまま固まっている新人冒険者に声をかけているけど、暫くは固まったまんまなのかもしれない。

 普通、クマと子どもが仲良しって信じられないだろう。

 こんなトラブルもありながらも、午前中いっぱいは薬草採取に励みました。

 そして、結果的に大量の薬草が採れました。


「「「ばいばーい」」」

「ガウッ」


 無事に薬草採取も終わり、ちびっこ軍団もお友達に帰りの挨拶をしました。

 僕たちは帰り支度をして、冒険者ギルドに帰ります。

 そして、ここでもすっかりおなじみになった光景が待っていました。


「ほら、薬草採取の報酬だ」


 ドン!


「えっ、こんなに貰えるんですか?」

「そりゃ、量で補えば金額も上がるぞ。冬だから、薬草の需要も高いぞ」


 単価が安くても量で補えば、必然と取引金額も上がります。

 新人冒険者にとっては、決して安くない金額が半日で手に入りました。

 もちろん、頑張って薬草を採ったちびっこ軍団にも、沢山のお金が手に入りました。


「これで、エリちゃんにお土産を買うよ」

「僕も妹に買うんだ」

「レイカも、妹ににお人形さん買うの」


 そしてちびっこ軍団は、以前から弟妹に何かを買ってあげたいと言っていました。

 夢が叶って、とっても良い笑顔です。

 でも、その前に美味しいご飯を食べましょう。

 食堂に移動して、みんなで昼食を食べます。


「はいよ。いっぱい食べて大きくなるんだよ」

「「「わーい」」」


 目の前にサイコロステーキ定食が出てきて、みんなは大興奮です。

 王妃様とアリア様にティナおばあさまも、いつも冒険者ギルドでの食事を楽しみにしています。

 それくらい、冒険者ギルドの食事は美味しいんだよね。


「一生懸命に食べたら、みんなでお買い物にいきましょうね」

「キュッ」

「「「はーい」」」


 そして、子どものお世話が上手なルシアさんとポッキーによって、ちびっこ達の意識は昼食に向きました。

 頑張って薬草を採ったからか、お腹が空いていて一生懸命にサイコロステーキを食べています。


「いやあ、朝トラブってるのを見たときはどうなるかと思ったけど、何とか終わったな」

「僕もどうなるかと思いましたけど、無事に終わって何よりです」

「ギルドマスターも、アレクとリズの講師ぶりを褒めていたぞ。もうちょいすれば、二人もいよいよCランク冒険者だな」


 ジンさん曰く、今日の初心者冒険者向けの講師をしたので僕とリズはCランク冒険者への基準をクリアしたそうです。

 とはいっても、肝心の冒険者としての活動が少なくなっているので、実際にランクが上がるのはもう少しかかるそうです。

 美味しい昼食を食べた後はみんなで買い物に行くんだけど、その前にちびっこ軍団にはもう一つお仕事が待っています。


「「「すー、すー」」」

「みんなよく寝ているわ。よっぽど楽しかったのね」


 まだまだ小さいので、辺境伯様の屋敷に着くとちびっこ軍団は来客用のベッドですやすやとお昼寝を始めました。

 あどけない寝顔に、双子ちゃんの母親であるソフィアさんも思わずニンマリです。

 因みにミカエルとブリット、メイちゃんとリラちゃんも、僕の屋敷に戻ってお昼寝をしています。

 こうして、無事にちびっこ軍団の冒険者デビューが完了しました。

 まだ小さいので勉強が優先だけど、月に数回みんなで冒険者活動をするそうです。

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