七百九十三話 無事に謁見も終了です
謁見の時間になったので、僕たちは係の人の後をついて謁見の間のいつもの位置にスタンバイします。
そして、皆が臣下の礼をする中を、閣僚と陛下も入ってきた。
「皆のもの、面を上げよ。新しい年を迎え、皆も気持ちを新たにしているだろう。昨年は新しい閣僚人事も動き出した中、あろう事か王国の法律を無視した貴族の犯罪があった。今年は、皆が王国の法を遵守し民のための政治や統治を行うように」
最初に、陛下による年頭の挨拶があった。
例の男爵家への処罰を報告する前に、この場にいる貴族へ釘を差していた。
とはいえ、まだ集まった貴族の中には俺が法律だと思っている人がいるだろう。
貴族が代替わりして法律に対する対応が変わる事もありえるし、まだまだ気をつけないといけない。
「では、昨年行われた五歳の祝い時の事件を発端とする男爵家への処分を発表する」
「それでは、処分を発表する」
陛下からバトンタッチした宰相が、男爵家の三家への処分を発表しました。
事前の会議と、処分内容は変更ありません。
淡々と処分内容が発表され、集まった貴族も冷静に受け止めていました。
「過去の栄光にしがみつき、現在を顧みないのは愚か者がすることだ。我々は、現在をそして未来を見ないとならない。短期、中期、長期の計画を立案し、未来へと進まなければならない。帝王学を学ぶものなら分かりきっている事だろうが、今一度自分はどうなのかを見つめ直すように」
歴史が長い貴族は、その長い歴史にとらわれて大失敗をした。
歴史は過去のもので、今起きていることではないのを理解してもらわないと。
更に、自分の領地をどうするか、真剣に考えて欲しい。
この後、幾つかの話があった後に謁見は終了しました。
僕たちは、謁見の間の袖口から控室に移動します。
「むしゃむしゃ、少し落ち着いたぞ。流石に今回は問題のありそうな貴族は大人しくしていたな」
「自分が何かを起こせばこうなるのだと、改めて自覚したのでしょう」
「こんなところで自覚するレベルでは駄目だ。最初から分からないと、話にならないぞ」
いつも通り、謁見の間のカロリー消費を回復するために、陛下はむしゃむしゃとお菓子を食べていました。
とはいえ、今回はトラブルも殆どない謁見で良かったと思っています。
「まあ、釘は差した。後は、奴らがどう動くかだな」
「どうせ奴らが馬鹿をして、俺が忙しくなるのは目に見えていますよ」
「だろうな。幸いにしてルーシーの入園関連では何も起こらないだろうが、税収が確定してくる夏以降に何か起きるのではないかと踏んでいる」
陛下とジンさんがお菓子を食べながら話をしていたけど、ルーシーお姉様の入園式はほぼ無風状態なんだよね。
昨年も、夏以降に色々と問題がおきたんだよなあ。
「おお、アレクには昨年も行った全部署のチェックを行って貰うぞ」
「人事異動があったので、新たな人がいますもんね」
「まあ昨年チェックしたから大丈夫かと思うが、念には念を入れておこう」
元々昨年の時点で年明けに全部署のチェックをする予定だったので、僕としても全く問題ありません。
どちらかというと、問題が起きた時にリズやレイナさんを止める役割のジンさんが大変なんだよね。
「ふふふ、リズが悪い人を残らず捕まえちゃうよ!」
「エレノアも、悪い人は見逃さないの!」
そして、リズとエレノアもやる気満々って感じになっています。
でも、その前に僕たちにはもっと大きなイベントが待っています。
「次の安息日にちびっこ軍団が冒険者デビューするから、そっちの方が大変だよ」
「えっ、大丈夫だと思うよ。みんな薬草を採るだけだもん」
「お姉ちゃんが、色々と教えてあげるの」
ルカちゃんエドちゃんに辺境伯家の双子ちゃん、それにレイカちゃん達がいよいよ冒険者デビューする日が近づいてきました。
既に武器屋さんに頼んだダガーとかも受け取っていて、みんなやる気満々です。
そこは先輩冒険者が沢山いるので、みんなで教える事になっています。
「ちょうどいい護衛の練習にもなるので、近衛騎士も複数立ち会わせるわ」
「いつまでもジェリルとランカーばっかりに頼ってはならないから、今回はノエルに指揮を取ってもらうわ」
ちびっこだけど高貴な人の集まりなので、王妃様とアリア様が色々と手を打っていました。
ノエルさんはちびっこ軍団とも仲良しだし、何と言っても王妃様とアリア様も一緒についてきます。
なので、戦力としても物凄い物になっています。
「子守として沢山の冒険者もついてくるから、ゴブリンが千匹いても瞬殺できるだけの戦力になるだろうな」
ジンさんが苦笑しながら僕と王妃様とアリア様のやり取りを見ていたけど、間違いなくそこら辺の軍隊よりも凄い戦力になりそうです。
こうして、新年の謁見は無事に終了しました。
暫くは、目の前の課題を少しずつクリアしていくだけですね。
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