七百八十七話 みんなの冒険者登録の準備

 年末に差し迫ったある安息日、僕の屋敷にちびっ子が集まっていました。

 メンバーは、ルカちゃんエドちゃんに辺境伯家の双子ちゃん、それにレイカちゃんやガイルちゃん達です。

 冒険者ギルドで冒険者登録する前に、装備を整えようという事になりました。

 因みに、全員に僕が作ったマジックバッグをプレゼントしています。


「ティナおばあさま、王妃様とアリア様はついてこなかったのですか?」

「二人とも、面会があって来れないのよ。ルーカスとアイビー、それにルーシーも同件ね」


 残念ながら、王家はエレノアとティナおばあさまのみ辺境伯領に来ました。

 まあジンさん達もいるし、ルシアさんも引率者としてついてくるから大丈夫でしょう。

 しかも、ミカエルとブリットがちびっ子軍団の先輩として引率する気満々です。

 因みに、既に冒険者登録しているメイちゃんとリラちゃんは、今日はちっちゃな弟と触れ合っているそうです。

 ということで、先ずはいつもの武器屋に向かいます。

 ゲートを使おうかと思ったけど、ポニさん達もいるし歩いて武器屋さんに向かいました。


「「「おおー! 武器がいっぱい!」」」

「はいはい、他のお客さんもいるから静かにしましょうね」

「キュ!」

「「「はーい」」」


 初めて入った武器屋に、ちびっ子軍団は大興奮です。

 ここは、ルシアさんがポッキーと一緒にちびっ子軍団をなだめていました。


「おや、賑やかだと思ったらアレク君達が来たのかい」

「おかみさん、うるさくしてすみません」

「気にしなくていいわよ。今は冒険者も少ないし、じっくり見ていってね」


 僕は、おかみさんと一緒にはしゃいでいるちびっ子軍団を見ていました。

 僕も武器をショートソードの二刀流に変更して、ダガー二本をミカエルとブリットにあげています。

 念の為に、予備の武器も持っています。

 リズは相変わらずファルシオンがお気に入りで、サンディはレイピアを武器にしています。

 エレノアは魔法使いなので杖をメイン武器として装備していて、イヨはゴツいガントレットです。

 さてさて、ちびっ子はどんな武器を選ぶのかと思ったら、いつの間にか一つの武器の取り合いになっていました。


「これは、レイカが買うの!」

「えー、僕が買いたいよ!」

「駄目だよ。僕が買うの!」


 そうです、お馴染みとなったセール品の樽の中に置いてある逸品の剣を、ちびっ子軍団全員が取り合っていました。

 ちびっ子軍団の武器の目利きは問題ないと思っていたけど、ある意味これは凄いなあ。


「あらあら、みんな凄いわね。辺境伯様の嫡孫様も良い目をしているわ」

「日頃から訓練をしているので、必然と良い目を養っていたのでしょうね」


 おかみさんとティナおばあさまが、ちびっ子軍団が良い目をしているのを嬉しそうに見ていました。

 辺境伯家の双子ちゃんは、良い目をするのが必然って感じだもんね。


「よーし、お前ら合格だ。この樽に一本だけ良い剣があって、それを見抜いたら、親方特製の剣を打って貰える事になっていたんだ」

「「「やったー!」」」


 ジンさんが樽の中の剣の秘密を教えたら、ちびっ子軍団は全身で喜びを表現していました。

 おかみさんがちびっ子軍団が樽の中の剣を見抜いたのをバッチリと確認したので、親方に剣を打って貰うのは問題ないでしょうね。

 ということで、さっそくお店の奥の工房から親方さんに来て貰いました。


「全員が樽の中の剣を見抜いたとは、お前ら中々良い目をしているな。少なくとも、この時点で下手な冒険者ではないと言えるだろう。どんな武器がいいか、希望を聞いてやるぞ」

「「「わーい!」」」


 親方が、ニカッと笑いながらちびっ子軍団の頭を撫でていました。

 人数が多いので、おかみさんも一緒に話を聞いています。

 といっても、まだ体が小さいので殆どがダガーを選択していました。

 希望を出したのは、この子だけでした。


「レイカ、お父さんみたいな大きい剣が良いな」

「うーん、今の体格だとショートソードをもう少し短くしたものだな。嬢ちゃんは、剣を背負う方が良いんだな」

「うん! お父さんみたいに、剣を背負いたい!」


 レイカちゃんだけは、ジンさんの聖剣をモデルにしたものにしたいそうです。

 この剣だけは、一から作らないと駄目みたいですね。

 でも、両親のジンさんとレイナさんは両方とも剣士なので、ある意味レイカちゃんらしいなと思いました。


「よし、こんなもんだな。リズ、人数分のダガーを魔鉄にしてくれ」

「よーし、直ぐにやっちゃうよ!」


 レイカちゃん以外の全員がダガーなので、リズがダガーを魔鉄にしていきます。

 レイカちゃんの剣は、スラちゃんがショートソードを魔鉄化してそこから親方が短く加工していきます。


「よし、出来上がりは年明けだな。今は優先するものがないから、直ぐに取り掛かるぞ」

「「「お願いします」」」


 親方が力こぶを作ると、ちびっ子軍団は親方さんにお礼を言っていました。

 因みに、お金はジンさんとティナおばあさまが既に払っていました。

 ちびっ子軍団の冒険者デビューは年明けの予定だから、ちょうど良いタイミングですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る