七百六十四話 薬草採取にゲストが参加

 怪しい商人の話は、他のところでも聞かれました。

 それは、安息日に久々に薬草採取に行った時のことでした。


「あーあー、なんか変な奴がいたなあ。やる気がもりもり出てくる薬だって言っていたぞ。怪しすぎるから買わなかったぞ」

「睡眠の必要がなくなる薬って言っていたのもいたぞ。布じゃないが、表情は隠していたな」

「怪しいのは、一人じゃねーな。身長と体格と声が違っていたから、多分同一人物じゃないぞ」


 顔馴染みの冒険者が色々と教えてくれたけど、時期はブランデー子爵領で怪しい人物が確認されたタイミングと合致する。

 取り急ぎ関係者に通信用魔導具で連絡をして、情報を共有しておこう。


「辺境伯領の冒険者は初心者もいるけど、そういう危ない薬に手を出す人は少ないですよね」

「そうだな。ノリが良い奴は多いが、馬鹿は少ない。更にベテランが新人に良く指導する文化もあるのが大きいな」

「その点、他の領地の冒険者ギルドはちょっと心配ね。既に王都のギルドマスターから各地の冒険者ギルドに不審な者から薬を買うなど周知されているらしいわ」


 僕の意見に、ジンさんと本日薬草採取に参加するティナおばあさまも同意していました。

 辺境伯領の冒険者はとっても良い人が多いから、そんな変な薬には手を出さないだろう。

 因みに、今日はティナおばあさまの他にルーシーお姉様、エレノア、メアリ、ノエルさんもいます。


「今日はぴぃちゃんも一緒に参加できるね」

「ぴぃ!」


 ルーシーお姉様は従魔のぴぃちゃんと一緒に薬草採取ができるとあって、とっても良い笑顔になっていました。

 体験入園では散々な目にあったから、上手く気持ちを切り替えて欲しいな。

 そして、ルーシーお姉様がご機嫌な理由がもう一つあります。


「ランお姉ちゃんは、ルーシーお姉ちゃんとお友達なんだね。じゃあ、リズともお友達だよ!」

「あの、その……」

「エレノアともお友達なの。ルーシーお姉ちゃんは、エレノアのお姉ちゃんだよ」

「えーっと、その……」


 今日は、ルーシーお姉様が体験入園で仲良くなったランさんも一緒に薬草採取に来ています。

 ランさんの周りには女性陣が集まっていて、何だかランさんはワタワタしちゃっていますね。

 因みにランさんは初心者冒険者ではなく、なんとEランク冒険者でした。

 なんでも家計のためによく冒険者活動をしていて、今日も冒険者活動をする予定だったそうです。

 沢山の人がいるので、護衛にポニさんもついてきています。


「おお、ルーシー殿下の同級生か。しかもEランク冒険者とは、ちっちゃいのに中々やるな」

「ちっちゃいのはいらないだろう。ここの薬草採取はとにかく数が採れるから、薬草を束ねる紐は沢山あった方がいいぞ」

「あっ、ありがとうございます」


 ランさんの所には、リズたちだけでなく冒険者も集まっていた。

 ランさんの身長が低いので、僕たちと一緒に来た新人冒険者だと思ったらしいです。

 それでも色々とアドバイスをしているあたり、やはり辺境伯領の冒険者は世話好きな人が多いですね。

 そんな中、ランさんがルーシーお姉様に困惑しながら話しかけてきた。


「あ、あの、ルーシー様。先程の商店街や街の人もそうですし、冒険者もルーシー様に普通に声をかけていましたが……」

「私も、この辺境伯領にはよく来るからね。ジンさんの結婚式では馬車に乗ってパレードに参加したし、もう皆さんとは顔見知りなのよ」

「はっ、はあ……」


 僕とリズは最初は冒険者として街の人と接していたし、王族も僕の関係者というのもあるけど普通に受け入れていた。

 辺境伯領の街の人の柔軟さって、結構凄いって思うよ。

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