七百四十三話 冒険者ギルドで講師をします

 今日は久々の冒険者活動なんだけど、やる事がちょっとだけ違います。

 僕たちは、ギルドにある部屋にいます。

 因みに、今日は王族の皆さんはお茶会で不在です。


「えっと、皆さん初めまして。今日、皆さんの講師をするアレクサンダーです。どうぞ、アレクと呼んで下さい」

「エリザベスです。リズって呼んでね」

「同じく講師のサンディです。宜しくお願いします」


 そうです、今日は新人冒険者向けの講師をしています。

 DランクからCランクに上がる必須条件です。

 サンディはまだEランクだけど、事前に講師をやる分には問題ないそうです。

 流石にイヨはまだFランクなので、今日はミカエル達と一緒に補助的な事をして貰います。

 ジンさんも部屋の壁際にいてくれて、何かあったら手助けをしてくれます。

 新人冒険者も多種多様で、小さい子どもから大きい人までいます。

 机の上に足を乗っけて偉そうな態度をしているスキンヘッドがいるけど、あんな態度を取る人は絶対に失敗するね。


「僕は、こう見えて冒険者歴五年のDランクです。薬草採取から魔物の討伐まで行っています。冒険者は自己責任と言われていますけど、やっぱり勝手な行動を取る人は絶対に失敗します。他人を傷つけたり成果を奪う事は、人として基本なのでここでは敢えて説明しません。僕たちは動物ではありませんので、よく考えて行動しましょう」


 若い男性や女性が思わず「おー」って言っているけど、この辺りは基本中の基本だもんね。

 スキンヘッドは「けっ」ってしているけど、あんな感じじゃ動物と一緒だもんね。


「えっとね、最初はGランクから始まるんだよ。リズも一生懸命頑張って、一つずつランクを上げていったんだ。例えば、EランクからDランクに上がるためには、特定の物を集めたり倒したりしないと駄目なんだよ。でもね、悪い事をしたり無理な依頼を受けて失敗ばかりしていると、冒険者ランクも下がっちゃうんだよ」

「ギルドカードは無くさないで下さい。身分証などにも良く使われます。でも、無くすと再発行となりお金がかかります。この辺りは、商業ギルドと一緒ですね。後は、とにかく調べる事です。道程や装備、目標の討伐や採取の仕方です。なので、回復魔法が使えないならポーションなども揃えましょう」


 リズもサンディも、無難に説明をしています。

 というか、冒険者なら当たり前の事だもんね。

 でも、その当たり前を知らない人も沢山いるんだよなあ。


「では、質問を受けます。質問のある人は手を上げて下さい」

「はい。薬草採取だけでも、冒険者ランクは上がりますか?」

「ある程度のランクまでは確実に上がります。例えばEランクからDランクに上がる条件に、ある種の薬草が含まれています。薬草採取に限らず、多くの依頼を受けるのが良いと思います」


 僕たちは安全の為に薬草採取がメインだけど、多分薬草採取だけでも初心者は卒業出来ると思うよ。

 でも、薬草採取中に動物や魔が襲ってくる事もあるんだよね。


「はい、女性でもAランクに上がれますか?」

「Aランクになれますよ。今皆さんの後ろにいる大人の女性は、全員Aランク冒険者です」

「「「おおー!」」」


 レイナさん、カミラさん、ルリアンさん、ナンシーさんは全員Aランク冒険者だもんね。

 女性だけでも、十分にAランク冒険者になれますよ。

 でも、スキンヘッドは「けっ」ってつまんなそうな表情をしているね。


「あの、もしかして【双翼の天使様】って二つ名を持っていますか? 金髪の男女の冒険者って話を聞きました」

「あっ、はい、そんな二つ名で呼ばれております。二つ名は冒険者の強さを表しているとも言われていますので、皆さんも是非カッコいい二つ名を得て下さい」


 女性が恐る恐る二つ名について聞いてきたけど、個人的にはジンさんの「救国の勇者様」っていう二つ名が一番カッコいいと思うけどなあ。

 他にも幾つかの質問に答えて、座学は無事に終了です。


「では、この後冒険者ギルドにある練習場で実戦訓練を行います。自分で自分の身を守る事は、とても大切です。薬草採取でも、動物や魔物から身を守らないといけませんよ」


 僕がこう言うと、スキンヘッドはニヤリとして大剣を手に立ち上がりました。

 そして、僕に視線を向けてきました。

 どうやらあのスキンヘッドは、僕と戦いたいみたいですね。

 その勝負、受けて立ちましょう。

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