七百四十話 王城へ戻ります

 殆どやる事が無くなったので、後は軍に任せて僕たちは王城に帰ることになった。

 僕たちに睨みをきかせているツンツン頭の息子の事は、今は放置で良いでしょう。

 応接室から、他の人たちがいる執務室に戻って後始末をしないと。


 ガチャ。


「あっ、お帰り。あら? ジン、何かあったの?」

「馬鹿のせいで大事になったよ。よりによって、ルーカスにティーカップを投げつけたんだからな。もちろん、魔法障壁で防いだ」

「「「へっ?」」」


 執務室に戻ると、明らかにぶすっとしている僕たちをみんなおかしいと思ったみたいだった。

 レイナさんの質問にジンさんが答えると、執務室に残っていた人たちはかなりビックリした表情に変わった。

 慌てた表情のリズ達が、ルーカスお兄様の所に集まった。


「ルーカスお兄ちゃん、怪我はなかった?」

「怪我はないし、全然大丈夫だよ。みんなありがとうね」


 ルーカスお兄様はリズ達の頭を撫でて、気持ちを落ち着かせています。

 何だか立場が逆にみえるけど、そこは気にしない様にしよう。

 僕は、大人達の会話に混じります。


「前からおかしい奴だと思っていたが、あそこまで馬鹿だとは思わなかったよ。王城で厳しい尋問になると思うが、ありゃ相当な刑罰になるだろうな」

「王族を直接攻撃して捕まった大逆罪なんて、王国の歴史を振り返っても稀だわ。しかも、次期国王の王太子を攻撃したなんて」


 ジンさんとカミラさんが話をしていたけど、僕もルーカスお兄様が直接攻撃をされたのって記憶にないなあ。

 エレノアの五歳の誕生日パーティーとはまた状況が違うし、ましてや今回は王国の貴族当主が攻撃者だ。


「ルーカスお兄様は、攻撃的な態度を全く取ってなかったですよ。あのツンツン頭の一人芝居だと思いたいです。でも、嫡男がこっちをずっと睨んでいましたよ」

「あの嫡男は、今後もかなり注意をしないといけないわ。攻撃的な性格は、当主譲りでしょう」

「今回の件を受けて、取り潰しはかなり高い。嫁の実家に戻って、あの嫡男は貴族籍を剥奪されるのが基本路線だろう。聴取にも一応応じているし、教会送りとかは難しいだろうな」


 軍務卿の言う通り、嫡男を直接処罰するのは難しい。

 最初に暴言を吐いたくらいだし、捜索でも嫡男の罪を示すような物は出ていない。

 でも、ティナおばあさまも危険視しているくらいだし、中々扱いが難しそうだ。

 陛下にも一連の事を報告しないとならないので、僕たちは馬車に乗って王城に戻りました。


「直接攻撃型の大逆罪は、確かに殆ど例がないな。たまたまルーカスにティーカップが飛んできたが、その場にいた他の者への攻撃も含めて良いだろう」


 僕たちが王城に着くと、直ぐに会議室に集まりました。

 リズ達は、勉強部屋に向かっています。

 陛下も面倒くさい事が起きて頭が痛そうだけど、この事を避けて通る事はできないだろうな。


「とりあえず、粛々と聴取と裁判などの準備を進める様に。嫡男も、関係者として継続して聴取をして良いだろう。今後どうするかは、聴取の結果次第だな」

「では、私が彼の聴取を行いましょう。ふふ、息子を睨みつけた子がどんなものか、じっくりと確認したいですわ」

「聴取は許可するが、違法な事はするなよ」


 王妃様が嫡男の聴取をすると言った瞬間、会議室にいる人全員に緊張が走った。

 絶対にあの嫡男は、ただじゃすまないだろう。

 だけど、王妃様に聴取を止めてと言える人は、この場にはいなかった。

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