七百二十八話 学園で発生したトラブル

 大盛況だった炊き出しの翌日、僕はローリーさんと護衛のジェリルさんと学園に向かいました。

 もちろん、お仕事で学園に行っています。

 プリンも一緒についてきて、僕の護衛を張り切っています。

 今日は、今まで纏めた教科書改訂に関する話し合いに行きます。


「いやあ、流石はアレク殿下です。もうこんなにもの情報を集められるとは」


 まだ数か所の領地で話を聞いただけだけど、そこそこの量の情報が集まっています。

 情報を集計して、担当の先生に渡します。

 中々の成果に、先生もとても喜んでいます。


「ただ、この成果は私と縁のある領地での聞き取り結果です。復興途中の領地もありますが、基本的には領地運営が安定している所の意見が多いです」

「それは致し方ないかと。全ての領地を回る事は難しいですし、何よりも領地運営が上手くいっていないところはアレク殿下の訪問を歓迎しません。そういう領地では、意見を集めるのも難しいかと」


 確かに誰にも見られたくない事があると、その人は情報を隠すだろうね。

 そういう領地には、おおっぴらに行くのはリスクがありそうです。


「頂きました情報を、我々も分析します。統治に成功している領地の例として、他の教科でも使えないか探ってみます」


 ここからは専門家の出番です。

 王立アカデミーも交えて、色々と分析するそうです。

 僕たちだけでは、キチンと分析できるか不安です。

 先生も忙しそうなので、話はこれで終わりです。

 僕とローリーさんは会議室を出ました。


 ざわざわざわ。


「さあ、執務室に帰ろう。って、あれはなんだろう?」

「喧嘩ですかね。ちょっと危ないですね」


 応接室を出た所で、廊下の先で喧嘩が起きていました。

 喧嘩というよりかは、数人が一方的に頭を抱えてしゃがみこんでいる一人を蹴っています。

 ジェリルさんも思わず顔をしかめるほど、良くない光景です。


「テメーみたいな平民が学園にいるなんて、虫酸が走るんだよ!」

「お前みたいなのがいるから、俺らが上のクラスにあがれねーんだよ!」


 先生と共に急いで現場に駆けつける途中で、いじめている連中の声が聞こえた。

 察するに、優秀な平民の子が上級クラスにいる為に、あの貴族三人組が上のクラスに上がれないと言い掛かりをつけているんだ。

 これは、絶対にあってはならない事だよ。


「お前たち、何をしている!」

「ヤベー、見られたか」

「くそ、逃げるぞ」

「あっ、置いていくな」


 先生が一喝すると、虐めていた三人組が僕達と反対方向に逃げ出した。

 しかし、反対方向からも別の人が現れました。


「お前たち、何をしていた!」

「よってたかって袋叩きをするとは、貴族として失格ですわよ」

「「「げー!」」」


 廊下の反対から現れたのは、息をきらしながら走ってきたルーカスお兄様とアイビー様でした。

 ルーカスお兄様とアイビー様も暴行の現場を目撃したのか、めちゃくちゃ怒っていますね。


 シュン、バシッ。


「「「うがっ」」」


 どさー。


 ここで壁走りをしながら三人組に追いついたプリンが、三人組に思いっきりタックルをぶちかましました。

 学園内は基本的に魔法禁止だから、プリンも配慮したみたいです。


「アマリリス、拘束しなさい!」


 ヒュンヒュン、ガシッ!


「「「がっ、動けねー!」」」


 アマリリスもとっても怒っているのか、す巻きみたいに三人組をぐるぐる巻きにしました。

 とりあえず、この三人組はもう動けないですね。

 その間に、僕はうずくまっている人の所に向かいます。


 シュイーン、ぴかー!


「大丈夫ですか? かなりの重傷でしたけど、何とか治りましたよ」

「あ、ありがと……」


 バタッ。


 あっ、怪我をした人が倒れちゃったよ。

 治療は完璧だったけど、元々受けていたダメージが酷かったんだ。


「ルーカスお兄様、この人は肋骨や指の骨が折れていました」

「そうか、アレク助かった。保健室に運ばないと」

「「「ふがふがー」」」


 ルーカスお兄様は、猿轡までされている三人組を無視して、気を失った人の所までやってきました。

 下手に動かしてはいけないので、僕はアイテムボックスから担架を取り出しました。


「大声で騒いで……、これはなんだ?」

「応援の教員を呼んで来い!」


 騒ぎに気がついた複数の教員が、更に応援を呼んできました。

 ぱっと見は、気絶した人が担架に乗せられてぐるぐる巻きにされて転がっている三人組がいるとんでもない光景だ。


「殿下、私たちがベッツを保健室に運びます」

「頼んだ」


 ここで、ルーカス殿下の同級生でもあるオーガスさん達がやってきて、手際良く担架を持って気絶した人を保健室に運んでいきました。


「「「ふがふがー!」」」

「さて、この馬鹿どもをどうするか」

「そうですわね。もう、手加減不要ですわね」


 そして、ルーカスお兄様が未だに訳わからない声を上げるぐるぐる巻きの三人組をまるで鬼の形相で見下していました。

 アイビー様からも、般若のオーラがにじみ出ているぞ。

 どうやら、結構大事になりそうだ。

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