七百十七話 今日の執務室は子ども部屋?

 マロード男爵領に行く前日、僕達は忙しくお仕事をしていました。

 勿論、明日温泉に行くからです。


 カキカキカキ、ペラペラペラ。

 カキカキカキ、ペラペラペラ。


「宰相、次の書類が出来上がりました」

「アレク君、今の書類がまだ終わっていないのだけど……」


 明日分の仕事も進めないといけないので、僕は今のうちに沢山の書類整理を行います。

 今日は調子が良いので、何だか書類整理もはかどります。

 お陰で、宰相の机の上にはサイン待ちの書類が沢山溜まっていきました。


「アレク殿下が優秀だから、宰相もサボる暇が無いわね。良い傾向だわ」

「アレク殿下は信じられない程頭が良いですから。学園にも入っていない子どもが副宰相だなんてとんでもないというものがおりますが、実際に見ると副宰相に相応しいと思います」


 シーラさんとローリーさんは僕について話をしているけど、単純に目の前にある仕事の量が多いんですよ。

 真面目にやらないと、普通に終わりません。

 こうして、昼食の時間まで僕達は一生懸命に仕事を行いました。


「「もぐもぐもぐ、おいしー!」」

「そう、良かったわね。いっぱい食べるのよ」

「「うん!」」


 僕達は、いつもの王族専用の食堂で昼食を食べています。

 ルカちゃんとエドちゃんもいっぱい食べていて、王妃様に褒められてとってもご機嫌です。


「お兄ちゃん、今日はお仕事忙しい?」

「忙しいよ。書類がいっぱい溜まっているよ」

「じゃあ、続きはお兄ちゃんのいる部屋でやろー」

「エレノアも手伝うの」


 リズ達は、僕達が各地で聞いた話の内容を纏めていた。

 今日はジンさん達が辺境伯領にいて王城にいないので、リズ達は午前中は勉強部屋で作業をしていた。

 この時は、僕の意見が聞きたいのかなと思っていたけど、現実は違った。


「うーんと、あーしてこーして」

「これはこっちかな?」

「「カキカキカキ」」


 そして午後になると、リズ達は宰相執務室に来て、調査結果を分類ごとに纏めている。

 これは、全く問題ない。

 ルーシーお姉様も手伝っているし、中々の結果になっているみたいだ。


「はい、これは何かな?」

「「りんご!」」

「じゃあ、これは?」

「「キャベツ!」」


 何故かルカちゃんとエドちゃんも執務室に来ていて、ティナおばあさまと勉強をしていた。


「「すー、すー」」


 更に、エリちゃんのベビーカーも執務室にあって、エリちゃんと飛天虎の赤ちゃんが仲良く寝ていた。


「ティナおばあさま、リズ達は執務室にいる理由か分かるのですが、何でルカちゃんとエドちゃんとエリちゃんが執務室にいるんですか?」

「大人達が皆会議で不在なのよ。だったら、皆でアレク君の所に行きたいってなったのよ」


 確か、大人の王族に来賓が来ているんだよね。

 スラちゃんが連れてきたみたいだけど、詳細は聞いていないんだよね。


 カリカリカリ、ペラペラペラ。


「宰相、次の書類です」

「アレク君は、本当にブレないね……」


 まあ勉強の邪魔をしている訳じゃないし、暫くこのままにしておきましょう。

 そして、おやつタイムになって、ようやく王妃様とアリア様が応接室にやってきた。


「エドもルカも、ちゃんとお勉強できたかな?」

「「できたー!」」

「そう、それは良かったわ」


 早速ルカちゃんとエドちゃんが、王妃様に抱きついていた。

 ちゃんと勉強していたのは間違いないし、ご褒美のおやつも貰っていました。


「あうあう」

「エリちゃんもご機嫌ね。お兄ちゃんと一緒だったからかな?」


 エリちゃんも一回おむつで泣いた以外は、とっても大人しくしていました。

 おむつは、シーラさんがササッと交換してくれました。

 でも、今エリちゃんを抱っこしているのはアリア様ではありません。


「あー」

「本当に可愛いですわ。ニコニコとしていますわ」


 今エリちゃんを抱っこしていたのは、今日の来賓だったカレン様だった。

 何でも、忙しい教皇様に代わって親書を持ってきてくれたそうです。

 カレン様は、エリちゃんを抱っこしていてとってもご満悦です。


「そうそうアレク君、この後会議を行うわ。ジン達も呼ぶそうよ」


 王妃様が僕に話をしてくれたけど、ジンさんも呼ぶとなると結構大きい会議ですね。

 もしかしたら、カレン様が王城に来た件と絡みがあるのかな?

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