六百七十六話 残念お宝じゃなかった
執務室に着くと壁に掛けられていた絵が外されていて、絵があった所に空間がありました。
「リズちゃんが、何か奥行きがおかしいって直ぐに気がついたのよ。それで、絵を外したら空間があったの」
「そして、その中にメモ書きが出てきたのよ。テーブルの上に置かれているものね」
ルリアンさんとナンシーさんが色々と説明してくれたけど、まさか本当に何か出てくるとは。
因みに、この屋敷にはこれ以上はないとスラちゃんが断言していた。
ティナおばあさまが、メモを手にとって読み出した。
「ふう、残念ながら目新しい情報はないわ。闇組織と取引をしていた貴族のリストで、既にリストにある全ての貴族家を調べているわ」
「えー」
「まあ、リズちゃんがこの屋敷にいた時にこのメモが見つかれば良かったけどね。念の為に、メモを軍にまわしておきましょう」
リズはとても残念そうにしていたけど、こればっかりはメモを見つけたタイミングってのがあるからなあ。
何れにせよ、バイザー子爵領では闇組織関連の事件は何も起きてない事が確定です。
「ぶー、大発見だと思ったのに……」
「そうそう大発見ばかりでも困るぞ。ただでさえ、お前らは色々な物を見つけるんだから」
ちょっと不満気なリズの頭を、ジンさんが苦笑しながら撫でていました。
既にカスバク子爵と男爵の件でお腹いっぱいなんだから、これ以上面倒な事は起きて欲しくないよ。
「あれ? ミカエル達は?」
「もうやる事がなくなったからって、庭に出て皆で追いかけっこするって部屋を出ていったわ」
レイナさんが教えてくれたけど、ちびっ子軍団は切り替えが早いですね。
僕達もちびっ子軍団の後を追って、庭に向かいました。
「「「わーい!」」」
「皆元気ねー」
庭でちびっ子軍団が追いかけっこをしているのを、僕と大人達がニコニコしながら見つめています。
リズ達年長組やスラちゃん達も混じってちびっ子軍団と追いかけっこをしているけど、気のせいか皆が身体能力強化の魔法を使っているので若干ほのぼのとした感じじゃないんだよね。
「皆が楽しければ良いのよ。それに遊びながら魔法の勉強にもなっているし、一石二鳥だわ」
「いや、まあそうなんですけど。俺としては、子どもっぽいほのぼのとした追いかけっこを期待していたので……」
「子どもは元気が一番よ」
うん、母は強しって事ですね。
ジンさんのつぶやきを、レイナさんとカミラさんがあっさりと否定していました。
まあ、ちびっ子軍団は元気があり余っているからなあ。
「ほら、そろそろ昼食よ」
「「「はーい」」」
いっぱい遊んでお腹が空いたちびっ子軍団は、ティナおばあさまの声に元気よく返事をしていました。
「「「おいしーいよ!」」」
「残さずに、いっぱい食べましょうね」
せっかくなので、アレクサさんもバイザー子爵領に呼んで、皆で昼食にします。
お母さんが沢山いるので、小さな子どものお世話はバッチリですね。
「では、また何かありましたら教えて下さい」
「はい、何時でも皆様をお待ちしております」
「「「すー」」」
そして、ちびっ子軍団が寝ちゃったので、今日はこれで辺境伯領に戻ります。
侍従長曰く、元気な声が屋敷から聞こえるのはやっぱり良いものらしいです。
こうして、バイザー子爵領での調査は終わりました。
カスバク子爵と男爵家への対応が残っているけど、取り敢えず一区切りですね。
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