六百五十四話 皆で辺境伯領へ

 僕達はお昼前に王城に戻って、関係者に色々と報告をします。


「そっち方面でトラブルがあったのか。まあ、対応としては問題ない。アレク、ご苦労だった」


 陛下から労いの言葉をかけられたけど、本題はここからだった。


「しかし、何で数年おきにお馬鹿さんが現れるのでしょうか。私の時にも、総代に文句を言う人がいましたわ」

「そうですわね。私の時もそうでした。どうも、女性が総代を務める時に揉め事が起こりやすいですわね」


 おお、ティナおばあさまと王妃様の時にも、卒園生総代でトラブルがあったとは。

 確かに今回のバード伯爵の息子も、エマさんが総代を務めるのではなく女性だからという事で文句を言っていた。

 もしエマさんが男性だったら、バード伯爵の息子も文句は言わなかっただろう。


「特に貴族嫡男の女性蔑視は、残念ながら根強く残っています。貴族主義の者と関係なくあるのが、本当に面倒くさいですわ」


 マロード男爵領特産のおせんべいをボリボリと食べながら、王妃様が答えていました。

 そういう面倒くさい貴族とも、今後は付き合わないとならないんですね。


「終わった事はこのくらいにしておきましょう。アレク君、確か辺境伯家での卒園を祝うパーティーは、夕方からでしたよね?」

「はい、辺境伯領の屋敷で行います。皆でわいわいとやる予定です」

「実はね、ルカとエドもパーティーに参加したいって言って聞かないのよ。辺境伯家の双子とも知り合いだし、辺境伯に連絡して参加する事になったのよ」


 エマさんとオリビアさんは、ジェイド様とルシアさんの結婚式でもルカちゃんとエドちゃんと一緒だったし、それ以外でもちょくちょくと会っているんだよね。

 辺境伯様の許可を得ているなら、何も問題はありません。

 皆でワイワイとしながらパーティーをするのは、とっても楽しいもんね。

 報告も終わったので、子ども部屋に向かいます。


「あうー」

「むー、じーズルい!」

「エリちゃん、さわる!」

「ちょっと待ってくれ!」


 ジンさんがエリちゃんを抱っこしていて、エリちゃんと触れ合いたいルカちゃんとエドちゃんがジンさんのズボンを引っ張っています。

 うん、いつもの光景なので皆スルーしています。


「ルカちゃんとエドちゃんも、エマさんとオリビアさんのパーティーに参加するって」

「「おおー!」」


 さっき聞いた事をリズとエレノアに伝えると、二人とも大喜びです。


「辺境伯は夕方になってから呼んでと言っていたから、先に辺境伯領に行きましょうか?」

「「はーい!」」


 王妃様の提案に、ルカちゃんとエドちゃんも元気よく手を上げていました。

 ちびっこ軍団で仲良く遊ぶのも、ルカちゃんとエドちゃんは大好きだもんね。


「じゃあ、あなたは留守番宜しくね」

「気を付けて行ってこいよ」


 王妃様は当然の如く陛下はお留守番だと言っていたけど、ルーカスお兄様とアイビー様もまだ学園だししょうがないよね。

 僕は辺境伯領にゲートを繋いで、皆で移動します。


「にーに、おかえり!」

「おかえり!」

「おっと、ただいま、ミカエル、ブリット」


 予定よりも早い帰りに、ミカエルとブリットもニコニコしながら抱きついてきました。


「じゃあ、昼食まで皆でお庭で遊んできてね」

「「「はーい!」」」


 アリア様がちびっこ軍団に声をかけると、元気よく僕の屋敷の庭に飛び出して行きました。

 いっぱい遊んでいっぱいご飯を食べて、いっぱいお昼寝しないとね。


「あの、アリア様、うちの娘のベビーベッドに寝かせて来ても良いですか?」

「すー」

「良いけど、多分降ろすと直ぐにグズるわ」

「ですよね……」


 そして、ジンさんは寝てしまったエリちゃんをひたすら抱っこする事になりました。

 本当にベビーベッドに寝かすと、エリちゃんは直ぐにグズるんだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る