六百四十一話 眠い所を起こされた罰

 シュッ。


 僕達は、スラちゃんの近距離転移で屋敷の前と後方に分かれました。

 探索魔法だと、屋敷周辺にいるのは全部で十人。

 僕達のいる屋敷前方にいるのは、そのうち四人だ。


「じゃあ、気をつけて……」

「ふふふ、寝ている所を起こしたお馬鹿さんに、制裁を加えないとね」

「そうそう、リズはもっと寝たかったのに!」


 あーあ、襲撃犯は眠れる獅子を叩き起こしちゃったみたいです。

 スラちゃんとプリンも起こされて怒っているけど、僕も実は寝不足で不機嫌なんだよね。

 という事で、襲撃犯にはさっさと退場して貰いましょう。


「そこに隠れているのは分かっていますわ!」

「とりゃー!」

「「「ぐがぁ!」」」


 物陰や庭の茂みに隠れていた真っ黒な衣装に身を包んだ襲撃犯は、猛獣と化したティナおばあさまとリズにスラちゃんとプリンによって狩りとられました。

 うん、僕はともかくとして、近衛騎士を押しのけて飛び出すのは良くないと思うよ。


 ずるずる、ずるずる。


「こっちもやったぞ。主にレイナ達がな」

「だって、ジンは逆に私達を止めたでしょ?」

「当たり前だ! 眠っているのを起こされたからって、馬乗りになって殴る馬鹿がどこにいる!」


 ジンさん達もあっという間に襲撃犯を倒したみたいだけど、女性陣が引きずっている襲撃犯は皆顔がボコボコだよ。

 これは、いくらなんでもやり過ぎだと思うな。

 一箇所に集められた襲撃犯に軽く回復魔法をかけて、襲撃犯から話を聞くことにしました。


 パンパンパン!


「ねえ、何でこんな馬鹿な事をしたのかしら?」

「ヒィィィ……」

「だあ、カミラ落ち着け!」


 未だに不機嫌なカミラさんがいきなり襲撃犯に往復ビンタをしたので、ジンさんが慌ててカミラさんを止めました。

 でも、カミラさんの攻撃は効果抜群だったみたいで、襲撃犯はびくびくしながら話し始めました。


「れ、レイクランド辺境伯を、あ、足止めする為に。ふ、ふふふ、も、もう、領境は、血の雨……」

「ははは、ネイバー伯爵家に逆らうからだ!」


 バシッ。


「うるさい!」

「ぶふぉ!」


 尋問している襲撃犯とは別の襲撃犯がベラベラと関係ない事を喋ったので、思わずレイナさんのビンタが炸裂しちゃった。

 でも、これってとってもマズイことじゃないかな?


「ふふ、このくらいは予測済みだ。領境は、既に軍と我が領兵により固めている」


 不敵な笑みを浮かべながら、レイクランド辺境伯様が屋敷から出てきました。

 相変わらず殺気を伴った、ごっついメイスを持ったままのカレン様と一緒です。


「皆様、そして貴方も現地に向かって下さい。私は、我が子を泣かしたこの愚かな者どもからもう少し詳しく話を聞きますわ」

「あっ、ああ……」

「「「ヒィィィ……」」」


 笑顔がとっても怖いカレン様に促されて、僕達は用意された馬車と馬に乗って領境に向かいました。

 襲撃犯の皆さん、素直にカレン様に話した方が自分の身のためだよ。

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